一昨日から、今週のお題「もしもの備え」に合わせて、私がこれまで東北など各地で気象予報士として仕事をしてきた経験をもとに、解説を掲載しています。
今日の記事では、私が講演などの際によく聞かれる質問を中心に、皆さんの「知りたい!」に答えます。
さらに、ちょうど昨日もオンラインで講演をして台風10号の話題も扱ったので、台風10号の最新情報も含めてお伝えします!
■目次■
(それぞれのQをクリックすると答えにジャンプすることができます。)
Q5. 結局、特別警報は出ないの?こんなにわかりづらい制度やめたら?
Q7. 警報とか○○情報とか、たくさんあってよくわかりません。
Q8. 台風の予報は気象庁しかやってはいけないと聞いたけど、なぜ?
Q1. スマホに避難勧告のお知らせが届いた。マンションの3階だけど避難所に行くするべき?
基本的には、家の中に留まる方が安全です。
まず、暴風に関しては、自分の家がプレハブや古い木造でないなら、よほど強い風(住家が倒壊し鉄骨が変形する瞬間風速60m/s以上)が予想されていない限り、家の中が一番安全です。
その上で、できれば窓から離れたところで、雨戸やカーテンを閉めた状態で、過ごしてください。
また、 土砂災害については、自宅が土砂災害のハザードマップで色が付いたところ(土砂災害の警戒区域や危険箇所)に該当しない場合は、家に留まる方が安全です。
川の氾濫については、自宅が洪水のハザードマップで色が付いているところ(浸水想定区域)に該当せず、また小さな川も近くにない場合は、家に留まる方が安全です。
小さな川が近くにあっても、マンションの3階など高いところに自宅があって、十分な備蓄ができているなら、家の中に留まってください。
なお、たとえ自宅が危険なエリアにあったとしても、雨・風が強い状態で夜間に避難所へ向かうのは危ないので、その場その場でより安全な方を自分で考えて選択するしかありません。
つまり、そんな厳しい選択を迫られるより前に避難を完了しておくことが望ましいので、報道では台風が来るたびに早い段階から注意喚起をしているということになります。
Q2. 雨は何ミリ降れば危ないの?
場所によります。
おおむね、その地点における年間降水量の約10%程度が一度に降ると、災害の危険性が高まるとされています。
年間降水量は場所によって大きく異なり、例えば鹿児島市では2000ミリ超、東京都心では約1500ミリ、瀬戸内の高松市では1000ミリを少し超える程度です。
Q3. 今回の台風10号は西日本が危険ってことでOK?
違います。
東海や関東でも、局地的に大雨になるおそれがあります。
昨日も今日も、夕立のようにいきなりザーッと雨が降りだしたり、雷雨になってりしたところがあちこちでありましたが、これは台風周辺の暖かく湿った空気が流れ込んでいることが原因です。
今後、明日にかけても同じように雨が降り、道路が浸水したり、用水路から水が溢れたりするおそれがあります。
東京都心も含めて油断をしないでください。
Q4. 台風10号ってなんでこんなに騒いでいるの?
一番大きな理由は、台風10号がすごく強いからです。
もう少し詳しく言うと、これだけ強い勢力で台風が日本に近づくこと自体が珍しい上に、特に九州にとっては、雨も風も波も記録的になるおそれのあるルートで進む予想だからです。
Q5. 結局、特別警報は出ないの?こんなにわかりづらいのやめたら?
まだ特別警報(大雨特別警報)が出る可能性は残っています。
また、気象庁もこの制度がわかりづらいのは認識しているので、まもなく制度が変更される見通しです。
もともと、2013年に特別警報の制度が始まった時点で、台風基準の特別警報と、雨量基準の特別警報がありました。
台風基準の特別警報は、決められた基準より強い台風やそれに匹敵する低気圧が接近する場合に、雨や風の予想の数値に関係なく問答無用で暴風・波浪・高潮(時期によっては暴風雪も)の特別警報を出すものです。
でも、重要なのはもちろん、雨や風の予報の数値がどのくらい危険なレベルになるかです。
そのため、実はもともとは大雨特別警報も台風基準で発表されることがあるような制度だったのを、2020年8月に制度を変更して、台風の強さに関係なく、雨量が数十年に一度レベルになる場合にだけ出すということになりました。
(ということで、今回の台風10号についても、大雨特別警報については発表される可能性が残っています。)
今後、暴風や波浪など他の特別警報についても、もっとすっきりしたわかりやすい基準に変更されていく予定でしたが、今回の台風10号には間に合いませんでした。
Q6. 避難勧告と避難指示ってどう違うの?
だいたい一緒なので、どっちが出てもすぐに安全確保をしてください。
一応違いを説明すると、避難勧告は「できるだけ早く避難してね」という意味で、避難指示は「まだ避難していない人はすぐ避難してね」というニュアンスです。
つまり、だいたい一緒です。
なお、だいたい一緒なのに名前が違う2種類の情報があるとややこしいので、政府ではこの2つを1つに統一するための作業を昨年頃から進めています。
Q7. 警報とか○○情報とか、たくさんあってよくわかりません。
できればそれぞれの情報の意味を理解してフル活用するのが望ましいですが、「やっぱりよくわからない」という場合は、とりあえず、漢字がいっぱい並んだ長い情報名が出てきたら「ヤバい」と思ってください。
災害の危険が差し迫っていることを表す情報は、大抵の場合、漢字が6文字以上並んでいます。
(土砂災害警戒情報、氾濫危険情報、記録的短時間大雨情報など)
Q8. 台風の予報は気象庁しかやってはいけないと聞いたけど、なぜ?
災害に関連する重要な情報なので、民間気象会社など複数の機関から情報が出されると混乱が生じ命の危険につながるおそれがあるからです。
なお、厳密には、特定の利用者向けの情報であれば、民間気象会社が台風に関する予報を提供することはできます。
Q9. 窓に養生テープを貼るのって意味あるの?
意味はありますが、万能ではありません。
(というより、この話は気象予報士の仕事ではありませんが…。)
工学の専門家によると、一番いいのは、窓ガラスに板を貼りつけた上で、縦横斜めの十字に養生テープを貼ることだそうです。
また、雨戸を閉めたり、テープも雨戸も何もない場合に暴風を迎えなければならないときは、カーテンを閉めて窓から離れたところで過ごしてください。
Q10. ハザードマップはどうやって見ればいい?
一番のおすすめは、重ねるハザードマップです。
役所が作ったとは思えないほどの使いやすさです。
また、ハザードマップは予め危険がひそんでいるところを教えてくれるものですが、その場所が実際に今、危険になっているかどうかは、気象庁の危険度分布で確認してください。