みちなるみちのく

東北180市町村を回った筆者が、あなたの知らない東北(みちのく)をご紹介します。

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いよいよ新米の季節! みちのく旨いコメのつくりかた①

季節の進みを証明するかのように、東京のスーパーでも少しずつですが新米手に入るようになってきました。

私が例年、新米の流通具合をチェックするJAタウンの新米商品ページでも、新米のラインナップが充実してきています。

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毎年、新米の流通が待ち遠しい。手に入ったらまずは塩むすび一択!

東北でもまもなく、米の収穫ピークを迎えます。

宮城県内では3日前(9月21日)、新米の等級検査が始まったというニュースがありました!

農家さんにとって、自分たちが育てたお米が一等米(お米の形やツヤが良い)と認められることはとても重要なこと。

今年は8月の猛暑の影響がどのくらい出るかが注目だとニュースでも言われていますが、農家さんの苦労が報われる結果になるといいなぁと思うばかりです。

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手塩にかけられた米は一粒一粒が美味しい。

普段、皆さんはどんなお米を食べているでしょうか。

知っているお米の種類だと、コシヒカリ圧倒的に多いかもしれません。

実際、日本で生産されるお米の約3分の1がコシヒカリです。

 

ただ、東北北海道では、福島県を除きほとんどコシヒカリを作付していません

北日本の気候では、コシヒカリを美味しく作るのに適さないためです。

 

東北6県それぞれでもっとも多く生産されている品種は、宮城岩手ひとめぼれ秋田あきたこまち山形はえぬき青森まっしぐら、そして福島コシヒカリです。  

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ここで注目は、太平洋側宮城と岩手でともにひとめぼれが多く生産されていること。

これには、東北太平洋側独特な気候が関係しています。

 

岩手が生んだ童話作家・宮沢賢治は、代表作の一つ「雨ニモマケズ」の中で、こう書いています。

サムサノナツハオロオロアルキ

「寒さの夏はおろおろ歩き」…、夏が寒いってどういうこと?

なんで夏が寒いとおろおろしないといけないの??

 

子どもの頃、教科書などで読んで不思議に思った方も多いかもしれません。

この「寒い夏」は、やませが吹く夏のことです。

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オホーツク海に高気圧があると、東北太平洋側に冷たく湿った北東風が吹き、気温が低くどんよりした空模様が続く。こういうときは、関東でも同様に曇雨天に。

やませとは、東北から見て北東側の海、つまりオホーツク海に高気圧が居座るときに吹く、冷たい北東風のこと。

高気圧のまわりの風は時計回りに流れるので、オホーツク海に高気圧があると、必然的にオホーツクの非常に冷たい海上を吹き渡ってくる非常に冷たい風東北太平洋側に流れ込むことになってしまいます。

 

このやませが持続すると、夏でも平地の最低気温が15度くらいまで下がるような、信じられない寒さになります。

もしこの寒さが、米にとって重要な出穂期(しゅっすいき:穂が出る時期)に重なってしまうと、大打撃

米が収穫できなくなってしまいます。

 

さきほどの「雨ニモマケズ」を書いた宮沢賢治は、農家の指導など農業に関わる仕事熱心にしていたので、寒い夏はお米のことが心配で心配でたまらなかったはずです。

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復元された宮沢賢治の手帳(光原社(盛岡市内)にて撮影)

このように東北太平洋側にとって長年の悩みの種であったやませに対抗するため、宮城県大崎市にある試験場で開発されたのが、寒さに強い品種・ひとめぼれです。

1980年の冷害をきっかけに品種改良が始まり、1991年に新品種として登録されたひとめぼれは、冷害の影響を受けにくいだけでなく、コシヒカリに似た甘みと粘りを持ち、味も文句なし

このお米を見て、食べて、一目惚れしてほしい…、そんな願いを込めて命名されました。

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やませに負けない米に辿り着くまで、約10年の歳月を費やした。

誕生当初は作付面積が少なかったひとめぼれですが、1993年の大冷夏の際に他品種と比べ被害が少なかったことで、一躍脚光を浴び、急激に作付面積が伸びました

直近では2017年の夏も記録的な冷夏となり、収量や品質が心配された東北の米ですが、ひとめぼれはその危機も乗り越えています。

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和食にも洋食にも合うひとめぼれは、今や次の世代の新品種の「親」として開発に貢献している。

ひとめぼれはコシヒカリに似た食味だけでなく、柔らかくて大粒になりやすい特徴があり、どんな食事にも合いやすい優等生です。

等級検査を終え、あと少しで皆さんの周りのスーパーでも手に入るようになると思いますので、まだ食べたことない!という方は、ぜひご賞味ください!!