三陸海岸、というのは東北の太平洋側に長々と続くリアス式海岸を指しますが、その三陸の真ん中よりちょっと北、岩手県田野畑村(たのはたむら)の断崖絶壁の上に、さりげなく佇むレストラン「ロレオール田野畑」。
ロレオール田野畑は、農林水産省の「料理マスターズ」を受賞し、テレビ番組「アイアンシェフ」(料理の鉄人の後継番組)に出演し見事勝利した伊藤勝康シェフが腕を振るうフレンチレストランです。
コースに使われる食材は岩手の海の幸・山の幸。
海の幸は魚だけでなく海藻や塩、そして山の幸は野菜やキノコだけでなく牧場の牛や合鴨、そしてイワナやヤマメなどの川魚まで多種多様です。
もともと本場のフレンチは地元の食材を使うことがほとんど当たり前の世界なので、地場産品を使うスタイルはフレンチによく馴染みます。
食材の種類は季節によって大きく変わるので、魚料理が多い日もあれば、野菜が多い日もあります。
そのどれもが、とにかく美味しい。
地方レストランとか、ローカルガストロノミーといった言葉を巷で聞くようになってからもう何年も経ちますが、地方でこんなにまで感動できる料理にはなかなか出会えないと思います。
海の食材も山の食材も、ちょっと苦いもの、甘みが強いもの、そして食感も様々ですが、それらが「料理」として美味しくなるようにプロの手で巧みに構成されている、そんな感じがします。
田野畑村は岩手県で2番目に小さい、人口わずか3000人余りの村です。
もちろん伊藤シェフの腕前をもってすれば盛岡など大きな都市でも料理長として繁盛店を作れそうですが、小さな村に人を呼び込んでこそ意味があると、様々なインタビューで語っていらっしゃいます。
お店までの道のりで見える景色も一緒に味わってほしいという伊藤シェフ。
三陸を形づくるリアス式海岸は海から陸に向かって急激に標高が上がるのが特徴で、専門的には海岸段丘(かいがんだんきゅう)と呼ばれる断崖絶壁が続きます。
この地形は、美味しいものが生まれるのに好都合です。
山のミネラルが直接、海へ流れ込むので海産物も美味しく育ち、豊かな漁場が広がります。
ちなみに、岩手県産の食材にこだわったフレンチは、岩手の伝統工芸品である南部鉄器で作られます。
岩手の鉄器鋳造会社が伊藤シェフが使うのをイメージして製造したフライパンは、鉄器ながらも片手で持てる軽さとのこと。
手軽な料理から手の込んだ本格的な料理までこなせる優等生プライパンだそうです。
店名の「ロレオール」はフランス語で「光背」を意味し、「田野畑に太陽の恵みあれ」という願いが込められています。
ぜひあなたの五感で、岩手の太陽の幸がめいっぱい詰まった極上のフレンチを堪能してください。