今週のお題が「もう一度見たいドラマ」になっていて、とりあえず東北でドラマと言えばこの話は抜きにできないでしょう、というのが「おしん」だと思われます。
平成生まれの社会人が増えてきて、角界でも平成生まれのお相撲さんが優勝したりしている中、昭和58年から59年にかけて放送されたNHKの連続テレビ小説「おしん」をリアルタイムで見た方は少なくなってきていると思いますが、圧倒的視聴率を誇り何度も何度も再放送され、アジアや中東をはじめとする海外68か国でも放送されたこの伝説的ドラマを、「まったく知らない人」もまた少ないのかもしれません。
山形県内では、あちこちで「おしん」のロケ地を示すポスターを見かけます。
有名なものの1つが、尾花沢市(おばなざわし)にある銀山温泉です。
主人公しんの少女時代に母親が働きに出ていた(という設定の)温泉街であり、またドラマ冒頭で81歳になった彼女が母親の思い出をたずねて現れる、印象的なシーンでもあります。
大正末期から昭和初期にかけて建てられた旅館が多い銀山温泉は、もともと延沢銀山(のべさわぎんざん)という鉱山開発で栄えた地でした。
現代ではSNSで有名になった絶景と良質な温泉を求めて賑わう温泉旅館は、そのほとんどが銀山川に沿って建てられています。
そして「おしん」の中でもっとも有名ではないかと思われるシーンが、主人公しんが丁稚奉公に出される際に最上川をいかだで渡っていく情景です。
ドラマの撮影をしていた昭和後期の当時ですら、もちろんいかだで川を移動する人は絶滅寸前だったので(ドラマの物語自体は明治末期から始まる)撮影は大変だったという逸話も残っていますが、川を下る彼女が「かあちゃーん、とうちゃーん!」と叫びながら涙するシーンは当時の日本人の心をわしづかみしたに違いありません。
なお、現在ではもちろんいかだはありませんが、観光船で舟下りを楽しむことができます。
「おしん」は明治末期に貧しい農家に生まれ、幼いころから丁稚奉公に出され過酷な人生を歩みながらも、持ち前の気概と才能で見事に大正・昭和の激動の時代を生き抜いた女性の人生を描いたドラマです。
撮影で主人公の生家として使われた古民家(撮影場所は山形県中山町)はその後、鶴岡市にある庄内映画村(現:スタジオセディック庄内オープンセット)に移築されています。
一般にも公開されている映画のオープンセットで、2013年に公開された「おしん」の映画版でも使用されているほか、「おくりびと」や「座頭市」でも撮影に使われた場所です。
映画のセットだけでなく、かつてこの地域で盛んだった養蚕の歴史を語り継ぐための資料も残されていて(松ヶ丘開墾場と言います)、歴代の天皇陛下も行幸にいらっしゃっています。
さてさてそんな昔懐かしい美しい風景の多い山形県ですが、今週は今シーズン初めての大雪となりそうです。
すでに先述の尾花沢市を含む各地で50~60センチの雪が降り積もっていますが、明日(12月15日)夕方までに予想される降雪量は山沿いで70センチ。
いくら雪に慣れている土地とはいえ、シーズン序盤は毎年事故が急増します。
来年の春に雪が解けるまで、出来る限りけがをしたり命を落としたりする人が出ないことを、願うばかりです。