せっかく今週のお題が「もう一度見たいドラマ」なので、今週はもう一つドラマの話をしたいと思います。
今回は、2007年上半期放送のNHK連続テレビ小説「どんど晴れ」。
またもやNHKの朝ドラで恐縮ですが、視聴率の高かったドラマの1つで、「もう一度見たい」視聴者が多かったこともあって2011年には続編となるスペシャルドラマ(BSプレミアム開局記念)が放送されています。
このドラマを一度でも見たことがある方は、タイトルバックに流れるこの一本桜を覚えているのではないでしょうか。
雪の残る春山を背景に、1本の桜の木がたたずむ緑の草原。
青、白、ピンク、緑、それぞれの色彩要素が一枚の絵のように美しく収まっているこの光景は、まだツイッターやインスタグラムによって絶景写真が世の中にあふれる前の時代の日本人にとって、強い印象を残したはずです。
場所は、岩手県雫石町(しずくいしちょう)にある小岩井農場。
ヨーグルトやジュースでおなじみの小岩井乳業が持つ農場です。
普段、あまり農場近くまで立ち入ることはできませんが、桜の時期には解放されて、毎年多くの人が訪れます。
もちろん春の風景がもっとも有名ですが、冬になるとこちら。
一面の銀世界に葉を落とした一本桜が凛と立ち、背景の雪山に差し込む朝日がピンク色に輝く、ファンタジーの絵本の1ページのような幻想的な光景になります。
一本桜の背景にあるのは、岩手山(いわてさん)。
標高2038メートル、「南部富士」とも呼ばれ岩手県民に広く愛され続ける美しい山です。
ドラマ「どんど晴れ」は、横浜出身のヒロインが結婚を機に岩手の老舗旅館で女将の修行に励む物語。
タイトルの「どんど晴れ」は、岩手で昔話を締めくくる言葉「どんどはれ」に由来し、大抵の場合「めでたし、めでたし」という意味に解釈されます。
嫁ぎ先の慣れない岩手の地では、様々な絶景がヒロインを迎えます。
岩手の特徴は、自然美の絶景も造形美の絶景も、どちらも豊富にあることです。
奥羽山脈から一線を画し独立峰のようにたたずむ岩手山、そして日本で最も古い化石が見つかる場所の1つである北上山地がそびえ、さらに沿岸にはリアス式海岸が長々と伸びる地理的な条件が自然美を生まれやすくし、また古くから城下町として栄え今なお東北北部最大の都市である盛岡には歴史が積み上げてきた造形美があります。
それらがただ独立して存在するだけでなく、遠野物語が受け継がれる地、そして童話作家・宮沢賢治を育んだ地でもある岩手の人々の感性が、自然物と人工物を共存させてきたからこそ、他にはない絶景が今も各所で見られるのだと思うのです。