今日2月4日、気象庁は「関東地方で春一番を観測した」と発表しました。
1951年から統計を取り始めて以来、史上もっとも早い記録です(これまでの最早は2月5日)。
立春から春分の間に最初に吹いた強い南風を表す「春一番」は、実は東北には存在しません。
今日は、”本当は怖い”春の便りのお話です。
1.春一番は「危険な風」
冬の終わりになると、たびたび低気圧が急速に発達しながら日本海を進むようになります。
春の空気が南から勢力を伸ばし始め、冬の空気とぶつかり合うことが多くなるためです。
低気圧の周りの風は反時計回りですから、低気圧が日本海を進んでいる間は広い範囲で南風が吹きます。
しかも低気圧が発達しているということは、等圧線の間隔は狭く、強い南風が吹くことになります。
この強い南風が立春以降初めて吹いたとき、「春一番」となります。
具体的には「立春から春分までの間に、日本海で低気圧が発達し、初めて風速8メートル以上の南よりの風が吹いて気温が上がったとき」、各地方ごとに発表されます。
(ちなみに風速8メートル以上というのは関東地方のおける基準で、四国地方では10メートル以上だったり、地方ごとに微妙に異なることがあります。)
「南よりの風」というのは南東風から南西風の間の風です。
春の訪れを感じさせる暖かい風ではありますが、被害を引き起こすような暴風となることが多く、もともとは漁師の間で注意喚起のために「春一番」または「春一(はるいち)」などと名付けられ畏れられていた風でした。
(長崎県壱岐市の観光ホームページより。春の強い南風による遭難で多くの漁師が犠牲となった郷ノ浦港近くの公園には、今も慰霊碑が残る。)
現代でも、船の事故だけでなく火災の原因になったり、鉄道の運行に影響が出るなど、注意が必要な風であることに変わりはありません。
2.なぜ「春二番」はないのか
春先にはこのようなこと(=低気圧急発達からの強風)がたびたび起きるようになるため、最初の1回だけを「春一番」と発表します。
いわば「春一番」は、今後も同様の現象が繰り返し起きる季節になりましたよ、というお知らせで、2回目とか3回目にはあまり意味がないので、「春二番」などは存在しません。
そして、春分(3月20日頃)を過ぎる頃には、"春らしい天気"になることは当たり前で、もう「お知らせ」は不要なので、立春以降の最初の強い南風が春分以降に吹いた年は、「春一番の発表なし」という扱いになります。
過去の春一番の発表日をまとめたページで確認すると、どの地方でも発表なしの年も割と多いことがわかります。
3.去った後も怖い
春一番を吹かせた低気圧がさらに進んで北海道の東へ抜けると、今度は日本付近が低気圧の後面、つまり北風のエリアに入ります。
しかも、低気圧が急速に発達している状態ですから、北風も強く吹きます。
春一番とともに上がった気温が急降下するだけでなく、北日本や日本海側では大雪や吹雪になることもあります。
春一番と聞くと、冬の終わりを告げる喜ばしい知らせという印象を受ける人が多いかもしれません。
実際に多くの場合、一時的にはあたかも春本番のような陽気になります。
しかし、春一番自体も危険な暴風となることがありますし、その後に続く北風は冬の嵐と強い寒の戻りを引き起こします。
つまり、「春一番」が吹く段階ではまだまだ「春本番」は遠いのです。
4.春一番が存在しない地域も
冒頭でも少し触れましたが、東北と北海道については、春先に南風が吹いても、そのあとに続く寒気の影響の方を強く受けやすく、南風をきっかけに春がやってくるという状況ではないため、「春一番」の観測・発表は行われません。
また、「春一番」が吹くような気圧配置は、南西諸島では風が強くなるようなパターンではないため、沖縄・奄美にも「春一番」はありません。
なお、今日「春一番」の発表があったのは関東だけでしたが、今後他の地方も基準を満たす風が観測されれば発表されることになります。
しかしいずれの地域についても言えるのは、「春一番」を境に寒さが終わって暖かくなるということはない、ということ。
実際に関東でも、来週すでに最高気温が10℃そこそこの日が続くと予想されています。
気温がアップダウンが大きいのもこの季節の特徴の一つ。
情報をマメにチェックして、気温に合わせた服装や寝具で体への負担を減らしてあげて、体調を守っていきましょう!