みちなるみちのく

東北180市町村を回った筆者が、あなたの知らない東北(みちのく)をご紹介します。

一目で欲しくなる!京の都とつながる独自文化が生み出す伝統の雛菓子(山形・庄内)

雛祭りのお菓子といったら通常は「雛あられ」ですが、山形県には一度見たら欲しくなてしまう、なんとも色鮮やかで可愛らしい伝統の雛菓子が存在します。

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https://mokkedano.net/event/30768#

(やまがた庄内観光サイト「鶴岡雛物語」より)

今週のお題「雛祭り」に合わせてお届けするのは、心躍るお菓子と山形の歴史の深い深い関係です。

 

山形県の海沿い、庄内地方と呼ばれるエリアでは毎年、雛祭りが近づくと、地元の和菓子屋さんで伝統の雛菓子づくりが始まります。

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大人も子どもも心躍るような鮮やかなこのお菓子は、大福などの和菓子によく使われる求肥(ぎゅうひ)白あんを使っていて、赤やピンク、黄色やオレンジといった色を付けられて、一つ一つ丁寧に形作られていきます。

おままごとの道具に出てきそうなフルーツだけでなく、地元の伝統野菜である温海(あつみ)かぶや、タイやエビといった縁起物も作られるのが一般的。

和菓子屋さんによっては、毎年20種類以上もの雛菓子を作ります。

kimuraya.co.jp

求肥を使った雛菓子というのは、全国的にも珍しいといわれています。

庄内地方の「珍しい」雛菓子の原点となったのは、北前船(きたまえぶね)と呼ばれる商船がもたらした京都の文化です。

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西廻り航路は、東北から日本海側を通って関門海峡を通り、瀬戸内海を通って大阪へ(画像:国土交通省)

江戸時代、京都や大阪といった大都市の食糧生産の大半を担っていたのは東北地方ですが、お米などの重い荷物を陸路で運ぶのは大変なので、を使っていました。

当時、日本海側のこと「北前」と呼んでいたため、「北前船」と呼ばれます。

山形県の酒田を出発した船は、途中いくつかの都市に寄港しながら大阪湾を目指します。

往路はお米紅花を中心とした農作物を携え、大阪でお金に換えたあとはそのお金で京都高価な工芸品などを買って、山形に持ち帰ったといいます。

当時、紅花かなりの高値で売れていたため、山形の商人たちはとても羽振りがよかったといわれています。

そして、酒田の港に到着した京の品々(仏像や石灯籠、それに茶葉などもあったようです)は、最上川の舟運によって内陸地域にも伝わりました。

北前船が山形にもたらした京文化は今もあちこちに残っていますが、代表的なものの一つが雛人形です。

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https://mokkedano.net/event/30768#

(やまがた庄内観光サイト「鶴岡雛物語」より)

通常、雛人形は向かって右側に女雛、左側に男雛を飾ることが多いですが、山形では京都と同じように向かって左側に女雛を飾る家がよくあります。

さらに、京都の貴族や天皇家で飾られていたような、古式ゆかしい雛人形が今も多く残っています。

一方、求肥を使った雛菓子は京都にはなく、山形独自のもの。

京都の工芸品とともに京菓子の製造方法などの高度な職人技術も伝わり、それが庄内地方で独自に進化した結果、生まれたと考えられています。 

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なお、山形県をはじめ東北地方では、雛祭りを旧暦に合わせて、今でも3月3日ではなく4月3日に祝う家があります。

雛祭りは「桃の節句」、つまり桃が咲くような春先の行事ですが、東北の3月3日というのはまだまだ雪に覆われている地域もあります。

(ちなみに、北陸の一部にも同様に月遅れの雛祭りの文化がありますが、北海道は普通に3月3日に雛祭りをするそうです。)

そのため、庄内地方の和菓子屋さんでは、さきほど紹介した和菓子を3月3日と4月3日の両方に合わせて製造・配送しているところがほとんどです。

(ということで、本日紹介した雛菓子をお取り寄せしたい方は、今は品切れでも4月3日に合わせた配送を頼めば注文できるお店があります!)

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飾りも食べ物も、地域ごとそれぞれの文化が存在する雛祭り。

それでも、桃の節句に込める思いは、今も昔も、そして西でも東でも変わりません。

女の子の健やかな成長を願う日が、今年もやってきます。