(※この記事は2021年3月に書かれたものですが、毎年春にあてはまる解説になっています。)
土日の天気予報に雨マークが多いのを見て「あれ?先週末も雨じゃなかったっけ?」と思ったのはあなただけではありません。
思い返せば、先週末3月13日~14日の土日は関東を中心に広い範囲で雨になって、雨・風ともに強まって交通に影響が出た地域もありました。
さらには、その前の土日も雨や曇りのところが多く、全国的にすっきりしない空模様の週末でした。
なぜ週末ばかり雨になるかというと、そういう「サイクル」に入ってしまったからです。
ちなみに詳しい解説の前にここで補足しておくと、広い範囲で雨が降るタイミングは週末だけでなく週の半ばにもやって来ています。
つまり正確には、今月はほぼ毎週、週の半ば(水曜日か木曜日ごろ)と週末(土日)に、広い範囲での雨が降っています。
カギは偏西風のスピード
冒頭で書いた"そういう「サイクル」"というのは、高気圧・低気圧が偏西風に流されて移動するサイクルです。
移動性高気圧の速度はだいたい時速30~40キロ程度、1日1000キロ程度移動する速さです。
高気圧の東西の幅は、約2000~3000キロですから、2~3日で日本列島を通過することになります。
すると、高気圧と高気圧の間の「気圧の谷」、つまり雨が降りやすい場所も、2~3日おきにやってくることになります。
この「気圧の谷」では、低気圧が発生して雨を降らせることが多く、その結果、晴れが2~3日続いたあと雨が1~2日降って、合計で3~4日。
つまり、晴れと雨のセットが3~4日周期でめぐることになります。
3~4日周期ということは…、晴れと雨のセットが1週間にちょうど2回入ります。
そうなると、一度雨が土日に降ると、次の雨は週の半ば、さらに次の雨はまた土日。
毎週末に雨が降るパターンの出来上がりです。
なんで春だけ…?
偏西風は、年中いつも同じ位置で吹くわけではありません。
春になると、冬の間は南下していた偏西風が日本付近まで北上してくるのです。
というのも、偏西風は暖かい空気と冷たい空気の間を吹く上空の強い風で、温度の境目に吹くことから、専門的には「温度風」と呼ばれる関係が成り立つ風の仲間です。
春になると日本付近を覆っていた寒気は北へ退き、南から暖気が追い上げてきて、その間を吹く偏西風はちょうど日本付近を吹くようになります。
このため、毎年春になるとなんだか急に頻繁に雨が降るようになったと感じるのです。
ちなみに上図からもわかるように、春と同様、秋にも3~4日おきに雨が降りやすくなります。
花を育む大切な雨
この時期の雨のことを、芽吹きを促す春の雨として、「木の芽雨(このめあめ)」や「木の芽(このめ)起こし」と言うことがあります。
花の咲く時期であることから「催花雨(さいかう)」という表現も。
花のつぼみに降りかかる雨粒が、まるで「早く咲いてよ」とささやいているように見えたのでしょうか。
他にも春の雨の表現として「育花雨(いくかう)」や「花の雨」、「桜雨(さくらあめ)」など数多くの言葉が残っていて、寒い冬を越えて春に花々が咲き始めるのを、昔から日本人がいかに楽しみにしていたかが窺われます。
ちなみに今年2021年は記録的な早さで桜前線が北上していますが、みちのく入りもまた記録的に早くなりそうです。
日本気象協会によると、仙台の開花予想は3月28日。
仙台の桜が3月中に咲くのはこの30年で1度しかない、かなり珍しいことです。
なお、春の雨はときに嵐を呼び起こします。
この土日の雨も、特に太平洋側は日曜日を中心に横殴りの雨になるおそれがありそうですので、お気をつけください。