続けてお酒の記事となりますが、今の時期は期間限定酒が多く、なかなか書ききれないほどです。
今日ご紹介するのは、福島県会津坂下町(あいづばんげまち)にある蔵元・曙酒造の代表的な銘柄「天明」の初夏限定バージョン「初夏の生セメ」。
最初に飲んだときの印象は驚きそのもので、一瞬甘いのか辛いのかもよくわからないくらいでした。
そのくらいとにかく濃厚な味わいで、二口、三口と飲んでいくと、なるほど旨味と酸味の両方が濃いとこうなるのかと納得していく感じです。
前回の記事でご紹介した、あさ開の「ハレの日の夏酒」とは真逆のタイプで、お酒が苦手な人にはおすすめできないけど、個性的なお酒を飲み歩いている人にはぜひとも飲んでもらいたい。
そもそも「生セメ」って何なのかという話ですが、「生セメ」の「生」は火入れをしていない生酒の意味で、「セメ」は日本酒を搾り取る際に採取した順番を示しています。
日本酒はもともと搾る作業をする前は、米と米麴と水が発酵してどろどろした「醪(もろみ)」という状態になっていますが、それを搾った際に最初に取れるのを「荒走り」、次が「中取り(中汲み)」、そして最後を「セメ」と呼びます。
「荒走り」は少し不純物が入っていることもありワイルドな味わい、「中取り」は一番透明で洗練された味わい、そして「セメ」は最後に圧力を増して搾り取る部分なので雑味があり複雑で濃厚な味わいになります。
一般的に流通しているお酒は、基本的にそれらをブレンドして多くの人にとって飲みやすいよう調整されています。
(曙酒造公式Facebookより、発酵中の醪の様子)
今回の「初夏の生セメ」は、曙酒造で扱っている複数の酒米のお酒のうち、山田錦・赤磐雄町・夢の香のセメ(大吟醸のセメを含む)をブレンドしたもの。
蔵元でテイスティングされ初夏に合う味わいのものを選んでブレンドされていて、もともと複雑で濃厚なセメがさらに厚みのある味わいに進化しています。
曙酒造は明治37年に創業した老舗で、枕草子の「春はあけぼの」にちなんだ社名と、夜明けを意味する「天明」を冠した銘柄で地元を中心に広く知られていますが、20年以上前に杜氏制を廃止し、自ら酒造りに取り組み続けてきました。
商品ラインナップは「天明」だけでもかなりの種類があり、今回の生セメのような季節限定商品も複数あって、目移りしてしまいそうなくらい。
曙酒造のお酒は全国新酒鑑評会やインターナショナル・サケ・チャレンジでも受賞歴が多く、その実力は証明されています。
飲むたびに新たな発見がある老舗のお酒、ぜひ堪能してください!