久しぶりに天文に関する記事です。
このところネットやテレビのニュースで見たという人も増えていると思いますが、明日11月19日にはかなり"珍しい"タイプの月食が起こります。
何がそんなに"珍しい"のか、そしていつ・どこで見ることができるのか、解説します。
まずは気になる月食の時間
今回、日本のほとんど地域で、月は地平線から昇ってきた時点ですでに欠けています。
というのも、北海道と東北北部以外では、月食が始まる時間が月の出よりも早いからです。
このように月が現れた時点ですでに欠けていることを「月出帯食(げっしゅつたいしょく)」といいます。
ちなみに明日19日の月の出は、仙台で16時17分頃、東京で16時28分頃、福岡で17時10分頃です。
そして、時間とともに欠けている部分は大きくなっていき、月の出から約1時間半後の18時3分頃になると、「食の最大」を迎えます。
あとで説明するように、このタイミングでは月の約98%が欠けて、月が"赤黒く"見えることになります。
上の図のように、月はこのとき東の方角です。
月食はその後2時間弱続き、徐々に欠けた部分は小さくなっていって、19時47分頃に終了します。
何がそんなに珍しい?
月食というのは月が地球の影に入って欠けて見える現象で、部分月食では月の一部が、皆既月食では完全に欠けます。
今回は前者のパターンなのですが、"部分"月食であるにも関わらず、なんと
つまり、いわば
ここまで「深い」月食が、しかもほぼ日本全国で見られるというのは89年ぶりのことで、しかも、「食の最大」の瞬間もほぼ日本全国で見られるとなると
ちなみにもう一つおまけで、今回は食全体の時間も長く、
ここまで長いのは数百年ぶりです。
見られる地域は
明日19日、月食が見られる18時頃の時間帯は、日本の広い範囲で晴れる見込みです。
詳しく見ていくと、北海道と東北日本海側では雨や曇りのところが多いものの、それ以外の地域は広く晴れ間がありそうです。
どうして月が「赤く」なる?
なぜ月が地球の影にほとんど隠れると、赤っぽく見えるのか。
その理由は、「地球に大気があるから」です。
そもそも月食が起きるのは、通常は太陽の光に照らされている月が、地球の影に入ってしまって、照らされなくなるためです。
つまり、月が輝くための太陽光を、地球が邪魔している状態です。
しかし、地球の周りに大気があることで、地球の輪郭に近いところを通る太陽光が、大気によって屈折されて、一部ではありますが月に届いて照らします。
いわば、地球大気がレンズのような役割を果たすのです。
そのため、月は欠けても消えることはありません。
ちなみに、太陽光というのはもともと赤から紫までの七色の光が混ざった光ですが、地球大気の中を通過するとき、青っぽい光から優先的に散乱されてしまい、最終的に届くのは赤っぽい光が中心になります。
(これは、光の波長の違いによる性質ですが、難しい話なのでここでは割愛します。)
そのため、食の間の月は通常と同じ色ではなく、赤っぽく見えるのです。
(なお、これは朝日や夕日が赤く見えるのと同じ理由なので、興味がある人は「レイリー散乱」をキーワードに調べてみてください。)
月食の見え方は毎回同じではなく、空気中のチリの量によって、オレンジに近い色のこともあれば、かなり黒っぽいこともあります。
なので、過去に月食を見たことがあるという人でも、ぜひまた今回も観測してみて、違いを楽しんでください!
そして月食が終わると、月は満月に戻ります。
月食は仕事中で見ることができない、という人でも、月自体は翌朝つまり20日午前6時50分頃まで見ることができるので、ぜひ晩秋の美しい月を見上げてみてください。
追記:
当日11月19日、東京では時々雲に隠れていたものの、食の大半を観測することができました!
日本で見られる次の月食は来年2022年11月8日、次回は皆既月食です。