これまで東北各地の桜名所をご紹介してきましたが、春の東北は桜だけではありません。
今日お伝えするのは、まるで不思議の国に迷い込んでしまったかのような、紫の絨毯が広がる絶景です。
妖艶な紫色を演出しているのは、カタクリの花。
八津・鎌足(やつ・かまたり)カタクリ群生地は、秋田県の内陸部、日本でもっとも深い湖である田沢湖の西側、秋田内陸線の八津駅近くの森の中にあります。
カタクリはユリ科の多年草で、花や葉はユリを小さくしたような姿をしていて、春になるとピンクを帯びた紫色の花を咲かせます(まれに白い花もあります)。
ちなみに江戸時代くらいまではカタクリの地下茎から片栗粉が作られていましたが、現代ではほとんどじゃがいもデンプンで製造されています。
八津・鎌足地域ではもともと西明寺栗と呼ばれる栗が特産で、カタクリの群生地もその栗林の中にあります。
なぜ栗の林の中にカタクリが群生するようになったか定かではありませんが、栗の栽培にあたり肥料が豊富に与えられたことや、定期的に栗の木を間伐していたことにより日当たりが良くなったことなどが理由として考えられています。
今では群生の数も密度も日本最大級、毎年4月下旬から5月上旬にかけて見事な紫の絨毯が広がります。
その広さは約20ヘクタール、東京ドーム4.2個分。
見渡す限りの紫、他では見ることのできない景色です。
八津・鎌足カタクリ群生地は、前述のように秋田内陸線の八津駅から歩いてすぐなのでアクセスが良いように思えるかもしれませんが、そもそも秋田内陸線に乗るのは結構大変です。
秋田新幹線の角館駅またはJR奥羽線の鷹ノ巣駅から乗り換えできますが、列車は1日10本程度。
ただ、とても魅力的な鉄道なので、レトロな車体や駅舎、そして窓の外に広がる美しい景色をゆったり楽しむのもおすすめ。
車で行く場合は、歩いて5分ほどの場所にある「かたくり館」に停めることができます。
(また、そもそもカタクリ群生地はかなり広いので、普通車であれば車で群生地を見学することも可能です。)
かたくり館では特産品の販売をしているほか、トイレも利用できます。
八津・鎌足のカタクリは今、遅咲きのエリアでも開花が進んでいます。
今年2022年の群生地への出入りは5月5日まで可能となっていますが、例年より早く咲き始めていたため、今月中に訪れるのがおすすめです。