みちなるみちのく

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梅雨前線がかからなくても梅雨入り?社会を振り回す「雨」主役の季節へ

一昨日6月6日、気象庁は関東甲信地方の梅雨入りを発表しました。

平年より1日早く、去年より8日早い梅雨入りです。

雨の季節が近づくと、我々気象予報士は毎年必ずといってよいほど「梅雨入りはいつ?」という質問をめちゃめちゃ受けます。

普段は「天気予報なんて結局当たらないよね」なんて言って気象予報士を頼ってくれない人まで、頻繁に聞きに来ます。

それだけ梅雨に対する世間の関心が高い証拠だと言えますが、実はその質問にはなかなかはっきり答えることができません…。

理由の1つは、「梅雨入り」の定義には天気図に基づいた明確な基準がないからです。たとえば、次の2つの天気図を見てみてください。

左図:2018年6月6日9時の天気図、右図:2014年6月5日9時の天気図(気象庁HPより)

上の図はいずれも過去に関東甲信地方で梅雨入りの発表があった日の天気図です。

しかし、左右の天気図はかなり雰囲気が違います

左図に関しては、本州の南に梅雨前線があって、これなら確かに「梅雨っぽい!」と思える天気図。

一方で右図は、そもそも梅雨前線がありません

ただ四国沖に低気圧があって、梅雨前線ではなくこの低気圧の影響で曇りや雨の日がこのさき続きそうだということで、気象庁から梅雨入りの発表がありました。

※各地の梅雨入り・梅雨明けの最新状況はこちらから↓↓↓

www.data.jma.go.jp

つまり、梅雨入りの発表には必ずしも梅雨前線は必要ない、ということなのです。

実は今年2022年に関しても、一昨日6月6日に関東甲信が梅雨入りしたものの、今週は関東甲信に梅雨前線がかかる日がありません

※最新の天気図はこちらから↓↓↓

www.jma.go.jp

ここまでくると、「じゃあ結局、梅雨入りって何?」と聞きたくなります。

気象庁のおける梅雨の定義は、

晩春から夏にかけて曇りや雨が多く現れる現象

で、週間予報をもとに今後曇りや雨が続きそうだと判断したとき「梅雨入り」を発表することにしています。

つまり、曇りや雨の原因が梅雨前線でなくても梅雨入りが発表されることがあるのです。

これが、梅雨入りのタイミングを予測しづらくする理由の1つです。

さらに、そもそも、ある日を境に急に雨の日が続くことは稀で、多くの年は少しずつ少しずつ雨の季節へ入っていきます。

つまり梅雨自体が「曖昧に始まる」現象なのです。

気象庁でも、梅雨入りには平均的に5日間程度の「移り変わり」の期間があるとし、梅雨入りの日は、その5日間の概ね中日を示していて、発表時の日付けも「○日ごろ」と表現します(梅雨明けについても同じように扱います)。

このように、もともと曖昧な現象を明確な基準なく発表していることが、「梅雨入りはいつ?」という質問の答えを難しくしているのです。

こうなるともう、「そんなにわかりづらい情報をわざわざ発表する必要はないのでは?」という気分になってきます。

しかし、梅雨の時期に降る雨は、社会に与える影響が非常に大きい現象です。

梅雨には大雨による災害が発生しやすくなるだけでなく、曇りや雨の日が多くなることによって農業や小売・流通業にも影響が出ます。

さらに、もし梅雨入りが大幅に遅れたり、梅雨明けが大幅に早かったりすれば、水不足になるおそれもあり生活に大きな影響が出ることになります。

梅雨入り・梅雨明けは社会的ニーズの高い情報、私たちの生活に欠かせない情報なのです。