毎年秋になると各地の酒店に「ひやおろし」が並び、日本酒ファンは「今年はどこのひやおろしを飲もうか」「いや全部いきたい!」とわくわくする季節です。
「ひやおろし」は出荷前に火入れをしない、いわば「生詰め」の日本酒。
夏の間に熟成されてまろやかになったお酒をそのまま味わえるのが特徴です。
今回は福島県で230年以上の歴史を持つ「弥右衛門(やうえもん)」のひやおろしをご紹介します。
「蔵の街並み」で知られる福島県喜多方市(きたかたし)にある大和川酒造店は、寛政2年(1790年)の創業以来、230年以上にわたり酒造りを続けている老舗の蔵元です。
古くから酒・味噌造りが盛んで約4000棟の蔵が点在するとされる喜多方市の中でも最古参の一つと言える酒蔵の一部は現在、「北方風土館」として公開され、音楽イベントなどにも利用されています。
その大和川酒造店が醸す日本酒の中でも主要銘柄である「弥右衛門(やうえもん)」は創業者・佐藤弥右衛門の名前でもあり、また代々の社長が受け継いできた名前でもあります(公式HPによると、2018年現在で九代目佐藤弥右衛門が社長さん)。
自社栽培の米を使う、まさに「田んぼから造る」こだわりで、伝統的な技術と現代的な設備の双方の利点を活かしながら、酒造りが続けられています。
その「弥右衛門」のひやおろし。
まろやかさとフレッシュさがほどよく相まって、丁寧な仕事を感じるバランス感。
食事に合わせやすく、やわらかい口当たりのお酒です。
そもそも日本酒は通常、貯蔵前と出荷前の2回、火入れをします。
ひやおろしは貯蔵前だけ火入れをして、出荷前の火入れをしていない状態です。
瓶詰前の火入れは流通過程で品質が劣化しないようにするのが目的なので、ひやおろしのように「生詰め」の場合は冷蔵状態で流通・保存することが必要になります。
現代ではどの季節でもひやおろしの出荷が原理的には可能ということになりますが、もともと江戸時代には冷蔵設備もなく、瓶詰前の火入れをしない商品を出すには、夏前に貯蔵を始めて秋に熟成を完成させ、涼しい時期に流通させるしかなかったため、ひやおろしは今でも秋の風物詩です。
これからの季節、各地の蔵元からひやおろしが次々と出荷されていきます。
ぜひ皆さんも今年イチ押しのひやおろしを探してみてください。
なお、弥右衛門のシリーズを含む大和川酒造店のお酒はオンラインショップでも購入できます!
230年以上続く老舗が醸す酒、ぜひ味わってみてください。