宮城県気仙沼市(けせんぬまし)、生鮮カツオの水揚げ26年連続日本一を誇る気仙沼港を臨む場所にたたずむ蔵元、角星(かくぼし)。
12年前の今日、角星の本社屋は津波で全壊し、小高い場所にあった製造蔵にもろみのタンクが2本だけ残ったそうです。
そのタンクに残ったもろみが、今回ご紹介する「船尾灯(ともしび)」の始まりです。
角星のある気仙沼市は湾の形の影響などもあり、周辺の市町と比べると津波自体の被害は比較的少なかったものの、重油ががれきに引火したことによる火災で大きな被害が出ました。
津波を生き残ったもろみを絞って日本酒にすることができたのはその2週間後、停電の続く中で大型の発電機を調達し、ようやく搾れたそうです。
それが「船尾灯(ともしび)」の始まり。
震災で真っ暗になった被災地に灯りをともし、復興の礎になるようにとの想いが込められています。
純米酒である「船尾灯」は、米の旨味がありながらもすっきりとした後味が特徴。
気仙沼で揚がるカツオやメカジキ、ホヤといった新鮮な海の幸を最大限活かし、最後の一滴まで飽きずに飲んでほしいと設計された味です。
蔵元の角星(かくぼし)という印象的な名前は、創業当時のエピソードに由来しています。
明治39年(1906)、当時の当主が神社で酒造開始の醸造安全祈願を行った際、献上する酒を満たした一升枡に、御神鏡を通して明けの明星が映り込んでいたそうです。
そこから名付けられたのが、「角星」の屋号。
気仙沼を照らしてきた「星」から生まれた「灯」は、今や地元だけでなく全国で愛されています。
角星の「船尾灯」は、宮城県のアンテナショップで買えるほか、オンラインでも購入できます。
オンラインショップでは他にも、角星の伝統的な銘柄である「金紋両国」や、2000年代に登場した「水鳥記」など各種ラインナップが揃っています。
震災から12年が経ち、もはや「被災地」とか「震災から何年」という言い方自体がそぐわないのかもしれません。
それでも、あの日起きたことは変わらないし、未来の災害から大切なものを守るために記憶を紡いでいくことの大切さも変わりません。
漁業のまち気仙沼に寄り添い続けた蔵元の醸す酒を味わいながら、あの日と、そして未来に思いを馳せてみませんか。