今週のお題「お弁当」と聞いて話さずにはいられないのが、青森県や岩手県の一部地域を中心に残っている「こびりっこ」という食べ物です。
南部せんべいに赤飯を挟んだ「こびりっこ」もよろしく。 pic.twitter.com/6vJZhfKJwR
— 紀伊国亭 むじな 🦡ムジラー🦡 (@mujina_kinokuni) February 17, 2021
(手元に画像がなかったのでTwitterで検索しました!)
南部せいんべいで赤飯を挟んでいる、つまり炭水化物を炭水化物でサンドするという衝撃的な食べ物。
地域によって呼び名が若干変わりますが、「こびりっこ」とか「せんべいおこわ」などと呼ばれます。
もともとは農作業に出るときの軽食として、持ち運びしやすいし手が汚れないし腹持ちもよい"畑のお弁当"として活躍してきました。
南部せんべいというのは、南部地域(後述)に伝わる郷土菓子の一つで、小麦粉を水で薄く延ばして丸い鋳型で焼いたシンプルなせんべい。
もともとは薄くてパリパリしたせんべいなのですが、赤飯をサンドして田畑へ持って行くと、食べる頃には赤飯の水分を吸って柔らかくなり、全体的にもっちりしっとりしたサンドイッチになるという具合。
呼び名の「こびりっこ」は、「小昼(こびる)」から来ているという説が有力です。
ちなみに南部地域というのは、かつて南部藩(盛岡藩)が治めていた地域で、ざっくり言うと岩手県の北半分(盛岡市含む)と青森県の東半分を指します。
(正確に説明しようとすると色々ややこしいのですが、ざっくりこんな感じ。)
ここで重要なのは、南部地域における赤飯は、我々が普通に思い浮かべる赤飯とは違うという点です。
なんと、砂糖入り。
しかも、わりと大量に入れます。
入れる量は家庭ごとに異なりますし入れない家庭ももちろん存在しますが、基本的にはざざざーっとたくさん入れることが多く、仕上がりはもちろんかなり甘い。
これだけでも衝撃ですが、通常赤飯に入れる小豆やささげの代わりに、甘納豆や金時豆の煮物を入れる家庭も結構あります。
(なお、調べたところ、赤飯に砂糖を入れる地域は南部地域だけでなく、青森・岩手の他の地域や、宮城・北海道にもあるようです。)
この赤飯を南部せんべいで挟んだ「こびりっこ」のカロリーは想像のレベルを超えそうですが、でもこのカロリーが、農作業という重労働には必要だったのです。
十分な栄養を摂れる食事すら贅沢だった時代から、働き手を支えてきたソウルフード。
「こびりっこ」も、そして甘い赤飯自体も、南部の人にとっての「思い出の味」でもあります。
どんな味わいか、ちょっぴり気になりませんか…?
南部せんべいは今や東北でなくても手に入りやすくなりましたし、(さすがにお砂糖入り赤飯を作ることはないとは思いますが)何かの機会に作った赤飯が余ったとき、ぜひ「こびりっこ」を作ってみてください!
私のおすすめは、典型的なしっとりバージョンよりも、サンドしたてでせんべいパリパリの状態。
ちょっと邪道かもしれませんが、南部せんべいのパリッとした食感と赤飯のもちっとした食感のコラボがたまらないです。
赤飯以外でもおこわ(もち米の炊き込みご飯)の仲間であれば結構いい感じにできます。
ぜひお試しあれ!