みちなるみちのく

東北180市町村を回った筆者が、あなたの知らない東北(みちのく)をご紹介します。

昔話のふるさと岩手に今も生きる座敷わらし 金田一温泉・緑風荘(岩手)

 

「昔、おじいさんとおばんさんが…」で始まる昔話を私たちはたくさん知っていますが、その中には東北が起源となっているものや、東北が舞台であると考えられているものが数多くあります。

たとえば、「天狗の羽うちわ」「ねずみの相撲」などは、(もちろん昔のことなので諸説あるものの)東北地方の昔話だとされています。 

中でも起源が東北の民話である可能性が高いのが、座敷わらしの物語です。

今の岩手県内に伝わる民話が起源とされ、現在でも岩手には座敷わらしの伝説が残る場所がいくつもあります。

 

その一つ、岩手県二戸市にある旅館・緑風荘に数年前、泊まったことがあります。

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「座敷わらしの宿」として知られる岩手県二戸市の緑風荘(再建後)

金田一温泉(きんだいちおんせん)と呼ばれる温泉の出る緑風荘はかなり前から、「座敷わらしが現れる宿」として有名でしたが、2009年火事で焼けてしまい、当時は「やっぱり座敷わらしなんていなかったじゃないか!」と批判されてしまいました。

 

なぜ火事で焼けた座敷わらしがいないという話につながるのか、地元でない人や、あるいは民話に詳しくない人には説明が必要かもしれません。

 

実は座敷わらしが出る家というのは昔から、商売繁盛などご利益があるとされているのです。

つまり、旅館が火事の被害にあって商売ができなくなるなんて、そのご利益とはまったく逆の話になってしまうので、そんな旅館に座敷わらしがいるなんておかしい、という理屈なのです。

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緑風荘の内部(再建後)。昔ながらの懐かしい調度品が並ぶ。

ところがその批判は、2011年に覆されます

 

2011年3月11日

東日本大震災という未曽有の災害によって、この緑風荘のある岩手県二戸市は震度5弱の揺れに見舞われました。

耐震性の低い、古い建物だった緑風荘がもし火事で焼けていなかったら、震災によって崩壊していたかもしれない

 

前述の2009年の火事のとき、旅館内部にはたまたまお客さんがおらず、犠牲者は出ませんでした

しかし、2009年に燃えずに2011年まで営業を続けていたら、東日本大震災で犠牲者が出ていたかもしれません

座敷わらしはそれを予見して、誰もいないタイミングで旅館を予め燃やした…そんな解釈もできます。

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緑風荘とゆかりの深い亀麿神社(緑風荘から歩いてすぐ)

もちろん真相は誰にもわかりませんが、2016年、緑風荘は6年半の歳月を経て復活しました。

以前のように、座敷わらしが現れるという槐(えんじゅ)の間がつくられ、座敷わらしに会いたいという人が全国から訪れます。

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再建後の槐(えんじゅ)の間。詳しいことはまた別の記事で書きたいと思うが、ここに亀麿(かめまろ)という座敷わらしが出るという。

個人的に思うのは、民話伝説というのは、人の心の中に生きて人の心の中で育つものだということです。

史実がどうかとか、あるいは科学的にかどうかではなく、同じことを思う人が多ければ多いほど真実味を増し、時代とともに思う人が減っていけばまるで最初から存在しなかったかのように忘れられてしまう。 

座敷わらし伝説が令和の世にも生き続けているのは、その存在を必要としている人が多い故だと思えてなりません。

 

そんな取りとめのないことを考えながら今日も眠ります。

皆さんの秋の週末が、実り多きものでありますように。