南から桜が咲き始め、まだまだ北からは寒気がたびたび押し寄せる3月の東北で、いち早く足元に現れる"春"があります。
この写真を見ても、都市部で生まれ育った人は何のことかわからないかもしれません。
これは、ふきのとう。
名前だけなら聞き覚えのある方が多いのでは。
山菜の一種で、日本のほとんどの地域で見ることができますが、北国でもまだ雪が残る寒さの中でいち早く芽を出すことから、東北では特に"春の兆し"として愛されています。
まだまだ朝は気温が氷点下になるような中でふきのとうを発見する喜びは、ひとしおです。
東北でも南部では関東と同様に2月のうちからふきのとうを見かける地域がありますが、秋田など北部ではちょうど今頃から。
ちなみに東北ではふきのとうのことを「ばっけ」と呼ぶ地域がほとんどで、「ふき味噌」のことも「ばっけ味噌」と呼びます。
ばっけ味噌は東北でも特に人気のある"ご飯のお供"の一つです。
ちなみにふきのとうは、ふき(蕗)という植物の花芽。
このくらいのコロンとした状態が食べごろです。
ふきのとうの成長は早く、あっという間につぼみが成長していきます。
ぐんぐん成長して…、
ふきのとうの「とう(薹)」(=花軸)の部分が立ってしまったものは、完全に食べごろを過ぎています。
「薹が立つ」というのは、いい時期が過ぎてしまったことを表す慣用句にもなっていますね。
この「薹」の部分が伸びていくと、最終的には1~2メートルにまで成長し、今度は「ふき」にとして食べられるようになります。
ところで、ふきのとうをはじめ、これから出てくる山菜は、独特の苦みがあります。
古くから、「春の皿には苦味を盛れ」と言われていますが、実はこれは、とても理にかなったことです。
というのも山菜は、冬から春に移り変わる時期、最初に土の中から出てくる柔らかい緑。
そのぶん、動物たちに食べられやすくなってしまいます。
そのため山菜が持つ苦味は、動物に食べられすぎないように生まれ持った性質だと考えられているのです。
また、苦いので大量に食べることはできませんが、私たち人間や、そして冬眠から覚めたクマも少し食べると言われていて、山菜に含まれる苦味成分が、冬の間鈍っていた新陳代謝を盛んにし、また胃腸の働きを活発にしてくれると言われています。
これは偶然ではなく、他の生き物との折り合いをうまくつけられた植物が、長い進化の歴史を生き抜いて、今も残っているためです。
気温や天気の変化が大きくなって体調を崩しやすい季節、旬の山菜も取り入れながら、元気に乗り切りきりたいですね!