今週のお題は、「575」。
若葉の美しい初夏、五感を呼び覚ますものとして、江戸時代の俳人・山口素堂が読んだ句が
目には青葉 山ホトトギス 初鰹
です。
俳句では本来許されない字余りのため、世間的には上の句を「目に青葉」として広まっていると思いますが、細かいことはさておき、視覚に鮮やかな青葉、聴覚に訴えるホトトギスの声、そして味覚を刺激する初鰹といった初夏の風物詩を見事に詠ったこの句を、多くの日本人が知っていることと思います。
もともとの句に読まれている初鰹ももちろん東北の初夏の味覚の一つで、特に宮城県気仙沼市にある気仙沼漁港は、これまで25年連続で生鮮カツオの水揚げ全国ナンバーワンを誇っているほど、身近で代表的な「初夏」です。
ただ、カツオの話は別の機会に譲ることにして、今回敢えてお訴えしたい東北の初夏の味覚は、アナゴです。
アナゴは夏と冬の両方に旬があり、夏は脂控えめでさっぱり、冬は脂が乗ってがっつりな味わい。
どちらが「本当の旬」と思うかは人それぞれですが、夏に脂たっぷりでもちょっと食べにくいので、自然と人間の付き合いは上手くできているなぁと思わずにはいられません。
夏アナゴの水揚げは6月頃からピークを迎えるので、ちょうど今が旬の始まり。
観光地としてアナゴが有名なのは宮城県の松島ですが、仙台にもアナゴ料理で有名なお店がいくつかあります。
私が仙台に住んでいた頃によく言っていたのは、名掛丁(仙台駅の近くのアーケード街)の「別館すが井」。
美味しいのはもちろん、そこまでお高い食事でもないので(おそらく東京のアナゴしか知らない人にとっては格安に感じるかもしれません)、仕事のある日でお昼の時間がゆっくり取れるようなときにも行ったりしていました。
価格が安い理由の一つはおそらく、宮城県のアナゴの水揚げ量が全国3位(2019年)で、かつ仙台は都市部と漁港が近いからかなと思っています。
仙台を訪れた友人にも勧めたりしていて、思い出深い場所です。
すが井の次にアナゴをおすすめするとしたら、「わたり あら浜」でしょうか。
アナゴの頭と骨から取った出汁で炊き上げたご飯の上に、ふっくらアナゴが乗っています。
脂の少ない、夏アナゴならではの贅沢な食べ方です。
これは以前から何度かおすすめしている、あら浜の「五季飯」の一つで、まもなく来月7月から店舗でもお取り寄せでも提供が始まります。
今か今かと待ち遠しいです。
皆さんにとって初夏の味覚は何でしょうか。
多くの食べ物は、旬の時期に食べてこそ栄養価が高かったり、あるいはその時期に体が欲する栄養素をそなえていたりと、自然って本当に上手くできている気がします。
ぜひ、宮城の美味しいアナゴもご賞味ください!