みちなるみちのく

東北180市町村を回った筆者が、あなたの知らない東北(みちのく)をご紹介します。

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ネット時代だからこその"謎のお菓子"との出会い 岩手・宮城銘菓「雁月」

雁月と書いて「がんづき」と読むその郷土菓子は、岩手や宮城の一部で昔から食べられている、黒糖味の蒸しパンのようなお菓子です。

素朴な甘さもちもちした食感が特徴の、どこか懐かしいほっとする味のお菓子。

その不思議な名前のワケは後半で…気になる人はここからジャンプ

さてさて、今から15年ほど前、私が雁月と出会ったのは、東北についてほとんど何も知らない頃でした。 

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雁月の例(写真提供:農林水産省)。いろんな形があるが、こういう三角形のものが多い。

今ではクックパッドやマカロニ、そして楽天レシピやデリッシュキッチンなど数多くの料理レシピサイトが存在しますが、当時はまだクックパッド独り勝ちの時代。

とはいえ、今では300万を超えるレシピが掲載されているクックパッドでも、当時のレシピ数は桁で少なかったと記憶しています。

掲載レシピをもとにユーザーが料理を作った写真を投稿する「つくれぽ」の数が10に達したレシピは「話題入り」としてリストアップされる仕組みで、今では「話題入り」するレシピも多すぎて全部目を通していると日が暮れてしまうほどですが、当時は1日にせいぜい10個~数十個程度でした。

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件のお菓子「雁月」を私が見つけたのは、まさにその「話題入り」レシピの一覧リストの中。

ただ、そのレシピを見ても特に「岩手」や「宮城」といった地名の言及はなく郷土菓子であるという説明もなく、ひたすら淡々と黒糖を使った蒸しパンの作り方が書かれているだけ。

レシピ名は「雁月」だけど、それが意味するところについても一切語られていませんでした。

それもそのはずで、当時のネット上にあった料理レシピというのは投稿者本人の覚書という面も強く、そこまで多くの人に見てもらうことを前提としていないレシピも多くあったのです。

今でこそ、できるだけ多くの人に見てもらって、できるだけ多くの人に褒められたいという願望のもとレシピや料理写真をネットに投稿する人が多数派を占めますが、まだそんな時代が来る前の話でした。

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そんなわけで私は、「雁月」という名前の黒糖蒸しパン的なお菓子があるという漠然とした知識とともにその後しばらく人生を過ごしていたわけですが、あるとき、テレビのバラエティ番組に突如「雁月」が登場します。

外国人に日本の食べ物を紹介するという体の番組で、日本各地の少し変わった郷土料理や郷土菓子が次々と「謎の食べ物」として面白おかしく演出されるスタイル。

もちろん外国人出演者にとっては見たことも聞いたこともない食べ物ばかりですが、中には日本人の芸能人も知らないものが登場し、彼らがびっくりする反応が番組のアクセントになっていました。

その流れで雁月もやはり「謎のお菓子」として日本人・外国人ともに「何それ!?」と驚きをもって迎えられたわけですが、私自身は何年も前に当たり前のように作り方が説明されている様を見てしまっていたので、逆に「何で驚くの?」と一瞬ポカンとしたのを覚えています。

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雁月の例その2(画像提供:農林水産省)。こんな風にパウンド型で焼いて切り分けるパターンもある。

ただ、岩手や宮城の郷土菓子だったという知識はそこで初めて知りましたし、番組内で「なんで『ガンヅキ』なんていかつい名前なの?」と話題になった際は、確かに…!と妙に合点。

その後調べたところによると、食感が雁の肉に似ているからとか、上に載せたゴマが空を飛ぶ雁の群れの様子に似ているからとか、様々な説があるようでした。

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(左)ジビエ料理、(右)渡り鳥の群れ。確かにジビエの肉はむぎゅっとした食感だし、雁などの鳥が群れで飛ぶ様子を地上から見るとまるで黒ゴマのよう。

そんな雁月は、冒頭で書いたように、いわば黒糖蒸しパンのようなお菓子です。

もともと農作業の合間に食べるおやつとして親しまれていたこともあり、蒸しパンといっても結構しっかりした生地でむぎゅっとした食感

そして、たっぷりの黒糖がカロリーを補給してくれます。

素朴な味が親しまれ、今でもお茶請けとして岩手や宮城の家庭で登場しますし、地元のスーパーにはよく売っています。

そしてなんと、最近は全国のコンビニにもあるようで…。

便利な時代になりました。

レシピも色々ありますが、ここでは富澤商店さんのものをご紹介しておきます。

tomiz.com

とにかく独特な食感と懐かしい感じのする甘さで、一度食べたらやみつきになります。

時代を超えて愛される素朴な味。

ぜひ皆さんも(ダイエット中でなければ!)味わってみてください。