みちなるみちのく

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夏と冬で揃う「日本一」の大わらじ —— 福島わらじまつり② 一揃いの伝統を守るために

昨日・今日の連載で、東北の夏祭りシリーズ最終章福島わらじまつりをお届けしています。

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約2千束の稲わらを使って作られる大わらじは「日本一」の大きさと言われる。

なお、一般の参加者を受け入れなかった今年の神事の様子もお伝えするために、昨日・今日の記事では、福島わらじまつり実行委員会提供の写真を使用させていただきます。

長さ12メートルの大わらじ担いで練り歩き、太鼓や笛の音、そして賑やかな踊りとともに福島の夜を盛り上げる福島わらじまつり

今日は2.本番は夏でなく冬!?3.伝統を守るためにをお届けします!


■目次■

1.あまりにも大きすぎる!(昨日の記事)

2.本番は夏ではなく冬!?(今日の記事)

3.伝統を守るために(今日の記事)

                          2.本番は夏でなく冬!?

例年8月第一週に行われる福島わらじまつりでは、長さ12メートルもある大わらじを「1つ」、つまり片足分を奉納します。

これでは「1足」のわらじにはなりませんが…、実は、福島わらじまつりには対になる行事が存在するのです。

 

福島市には古くから、信夫三山暁まいり(しのぶさんざんあかつきまいり)という伝統行事があります。

毎年2月信夫山(しのぶやま)という福島市のシンボル的存在の山にある羽黒神社に、長さ12メートルの大わらじを奉納する例祭で、300年以上の歴史があるとされています。

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信夫山の山頂にある羽黒神社に、「信夫三山暁まいり」で奉納された大わらじ。例祭として、夏の祭りとは異なる雰囲気を感じさせる。

五穀豊穣や無病息災を願って毎年2月10日・11日の2日間で行われ、東北の2月ですから当然、吹雪の中で行われる年も。

(2016年の毎日新聞ニュース。会員向け記事だが、会員でなくとも概要は読める。)

mainichi.jp

そして、のちに市民がに楽しめる祭りを作り、そこでも大わらじを奉納することで、2つ合わせて「1足」の大わらじにしようと、昭和45年(1970年)に始まったのが、福島わらじまつりです。

 

つまり、祭りは夏と冬で一揃い

しかも、伝統という意味では本番は冬と言えるかもしれません。

 

なお、前回の記事大わらじの由来は、人々を困らせていた大蛇の退治だったという説をご紹介しましたが、そのほかに、かつて羽黒神社の仁王門に安置されていた仁王様のためのわらじを奉納したことが起源だという説もあり、暁まいりの由緒を説明するにはこちらの方がよく使われています。

それにしても、いくら仁王様とはいえ、さすがに足が大きすぎますよね…!

 

                          3.伝統を守るために

夏・冬で1足のわらじが揃うよう開催されるようになってから50年の歳月が流れましたが、前回の記事でお伝えしたように、2020年の福島わらじまつりは中止に。

伝統を途切れさせないために、2020年は関係者による神事のみ行われました。 

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2020年8月8日に行われた「福島わらじまつり 疫病退散祈願神事」の様子。大わらじには例年と異なり「疫病退散」の文字が掲げられた。

冬の暁まいりと比べ夏の祭りはまだまだ歴史が浅いものの、今後10年、100年と引き継いでいくために、ここで途切れさせてはいけない

そんな強い思いを感じます。

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暮れゆく空に拍手(かしわで)が響く。大わらじは翌9日に雨の中、羽黒神社に奉納された。

来年こそは今年の分も、いやそれ以上に盛り上げてほしい。

私自身も、そう願わずにはいられません。

 

今日までシリーズで、東北各地の夏祭りをご紹介してきました。

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東北には他にも数え切れないほどの夏祭りがありますが、今回は東北絆まつり(東北の代表的な祭りを集めたイベント)に数えられる6つの祭りに限定してお送りしています。

 

どの祭りにも、その土地にとっての大切な歴史大切な伝統が関わっていて、どの祭りも地元の人々にとても大切にされていて…、

そしてそれこそが、祭りそのものの深い魅力につながっていると、思えてなりません。

 

来年の夏はぜひ、みちのくの熱い熱い祭りを現地で見て、触れて、感じてください!