引き続き今週のお題が「赤いもの」なので、東北の「赤くて素敵なもの」をご紹介していきたいのですが、今回はこちら。
一度は見たことがある!という方が多いのではないでしょうか?
福島県の内陸部、会津地方に伝わる郷土玩具「赤べこ」です。
「べこ」とは古くからある東北の方言で「牛」を意味し、赤べこは江戸時代から作られてきた張り子のおもちゃ。
首元は動くようになっていて、揺らすと頭がゆらりゆらりと可愛らしく動きます。
ちょっととぼけたような表情と丸っこいフォルム、そして肯くように動く頭の感じがなんとも愛らしいですが、赤べこの使命はただ可愛がられることだけではありません。
赤べこの体に描かれている丸い模様、これは疱瘡(天然痘などの伝染病によって体に現れる斑点)を表しています。
つまり、子どもたちを伝染病の脅威から救うための身代わりとして、赤べこにこのような模様を描くようになったと言われています。
また、赤は魔除けを表す色であり、災厄を避けて幸せになれるようにと、おもちゃとして常に子どものそばに置くようにしてきたとされています。
一方で、そもそもなぜ赤い牛がおもちゃになったのかは、諸説あります。
有力なのは、会津地方にある柳津町(やないづまち)の圓藏寺(えんぞうじ)にまつわるもの。
約1200年前に創建され国の重要文化財にも指定されているこのお寺を9世紀に再建した際、力持ちの赤い牛が現れて重い木材を運んでくれたという伝説です。
このことから会津では赤い牛を縁起の良いものとして考えるようになった、とされています。
また、張り子の技術については400年ほどまえにこの地に入って治めた蒲生(がもう)氏が、武士に副業として工芸技術を学ばせるために職人を呼び寄せたことがきっかけで生産が盛んになったとされ、会津には赤べこの他にも起き上がり小法師や天神様(菅原道真)などの張り子があります。
福島県内では、鉄道の駅や観光スポットなどあちこちで赤べこを見かけます。
特に会津地方では出現頻度が上がり、会津地方の玄関口・JR会津若松駅前では、大きな赤べこが観光客をお出迎え。
赤べこは前述のように張り子なので、和紙を何枚も張り合わせて作る、高い技術が必要な伝統工芸品でもあります。
近年は生産量も減り職人さんの数も減っていますが、一方で新しい感覚を取り入れたパステルカラーの"赤べこ"など、時代に合わせたデザインの商品も増えています。
なお、もともとは天然痘など当時まだ解明されていなかった不治の病から守ってほしいという気持ちを込めて子どもに贈られることの多かった赤べこですが、最近では新型コロナウイルスによる脅威から守ってくれるようにと赤べこを買い求める人も増えているようです。
いつの時代も変わらない、子どもの健康と幸せを想う気持ち。
赤べこの優しい瞳は、時代を超えて私たちを見守り続けてくれています。