冬が長く厳しい東北の山々では、平地で桜が咲き出す頃にようやく雪解けを迎えます。
雪が解けるとともに顔を出す植物たちの中でも「白い妖精」と呼ばれファンが多いのが、ミズバショウです。
ミズバショウ(水芭蕉)はサトイモの仲間で、冬の間は地面の中でイモ(球根)の状態でじっと寒さに耐え続けます。
そして春、雪解けとともにすっと背を伸ばし姿を現すので、まるで急に現れた妖精が春を知らせに来たかのようです。
ミズバショウと言えば
♪夏が来れば思い出す はるかな尾瀬
(中略)
♪ミズバショウの花が咲いている 夢見て咲いている
という有名な歌詞があることから夏が見頃と思われがちですが、東北では春先に楽しむことができます。
湿原や沼地など水の多いところに自生し、花のように見える白い部分は仏炎苞(ぶつえんほう)と呼ばれ葉が変化したもので、中心の黄色い円筒形の部分に花があります。
東北にはミズバショウの名所が多く、東北南部だと宮城県の白石市(しろいしし)や七ヶ宿町(しちかしゅくまち)など、蔵王周辺のエリアが有名で、毎年県内外から多くの人が訪れます。
上記写真の自然公園「水芭蕉の森」(宮城県白石市)では、今年2023年はちょうど昨日3月29日に開園式が行われ、ミズバショウの生育は例年よりやや早いものの、例年通りこれから4月中旬にかけて美しい姿を見られるとのこと。
また七ヶ宿町の玉ノ木原水芭蕉群生地(たまのきはらみずばしょうぐんせいち)では、山形県との県境付近、国道113号線沿いに白と緑の美しいコントラストが絵画のように広がります。
約3.5ヘクタールにわたり8万株ものミズバショウが群生する様子は、一度見たら虜になりそうな風景です。
東北北部では秋田県仙北市(せんぼくし)の刺巻湿原(さしまきしつげん)がよく知られていて、秋田新幹線も停まるJR田沢湖駅から徒歩15分という立地で、約3ヘクタールの広大な土地に6万株ものミズバショウが群生しています。
例年は4月上旬から姿を見せ始めるのが、なんと今年2023年はすでに3月下旬の段階で見頃が始まっているとのこと。
毎年見に行っている、あるいは今年こそ見てみたいという方は急いだ方が良さそうです。
ちなみに刺巻湿原では今年2023年は4年ぶりに「刺巻水ばしょう祭り」が開かれることが決まり、4月10日から5月1日の日程で、タイミングによってはミズバショウのほかにカタクリやザゼンソウといったカラフルな植物にも出会えるほか、特産品の販売もされる予定です。
雪解けとともに東北に春を運ぶ白い妖精、ミズバショウ。
春を迎えた湿原のすがすがしい空気とともに、その清らかな姿に癒されてみては。