みちなるみちのく

東北180市町村を回った筆者が、あなたの知らない東北(みちのく)をご紹介します。

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名前負けしないスケール!世界谷地に百花繚乱の季節がやってきた(宮城・栗原市)

宮城県の栗原市、岩手・秋田との県境にそびえる栗駒山(くりこまやま)の中腹に、世界谷地(せかいやち)と呼ばれる場所があります。

標高約700メートル、「世界谷地湿原」や「世界谷地原生花園」などとも呼ばれるこの地では、毎年6月~7月を中心に平地では見られない可憐で美しい花々が咲き揃います。

今回は、初夏の世界谷地の魅力をぎゅぎゅっと凝縮して解説します!

世界谷地には全国有数のニッコウキスゲ(後述)の群生地がある。

 

名に恥じない広さは東京ドーム3個分!

世界谷地(せかいやち)とは「広い湿地」という意味で、谷地という単語のついた地名は東北だけでなく北海道にも存在します。

栗駒山のゆるやかな南斜面に細長く伸びるエリアに大小8つの湿原が存在し、その間を幅50メートルほどのブナの原生林が横断する、まるでファンタジーの設定に出てきそうなジオグラフィーです。

東京ドーム3個分の広さを誇る世界谷地湿原。

 

高山植物の宝庫!一番人気のニッコウキスゲは6月が見頃

世界谷地では、雪が溶ける5月から9月という短い期間に、ショウジョウバカマやタテヤマリンドウなど様々な高山植物が芽吹き、花開きます。

泥炭層の上を覆うコケ類の大地に競うように咲く様子は、まさに高山植物の宝庫。

世界谷地で見られる高山植物たち。左からミツガシワ(5~7月)、キンコウカ(7~8月)、コバキボウシ(8~9月)。

特に人気のニッコウキスゲは毎年6月頃に見ごろを迎え、だいたい同じ時期に楽しめるレンゲツツジやワタスゲと一緒に、湿原をカラフルに彩ります。

レンゲツツジの濃いオレンジ、ニッコウキスゲの黄色、ワタスゲの白、緑の草原と青い空。そして遠くには残雪の栗駒山が見える(過去の様子)。

湿原には木道が整備され、専用駐車場から徒歩15分で花園を楽しめるのも人気の理由の一つ。

体力に自信がない場合は短い距離をハイキング、本格的に歩きたい場合は世界谷地原生花園駐車場から栗駒山山頂にいたる片道約9キロの登山道もあります。

初夏の高原に似合う花、ニッコウキスゲは正式な名前を「ゼンテイカ」と言う。見た目はユリに似ているはユリの仲間ではなく、漢方などに使われるカンゾウ(甘草)に近い種(過去の様子)。

 

足に自信があれば「千年クロベ」に会いに行こう

ここまで読んで、栗駒山そして世界谷地エリアをがっつり歩きたい!と思った方におすすめなのが、巨木に会いに行くこと。

栗駒山には推定樹齢が1000年になるという「千年クロベ」と呼ばれる巨木があります。

クロベというのはヒノキの仲間の木で、2008年の岩手・宮城内陸地震で周辺の道路が崩れてしまい、最寄りの駐車場から徒歩で数時間かかるようになったため、今や「隠れた名所」になっています。

https://www.rinya.maff.go.jp/tohoku/introduction/gaiyou_kyoku/annai/midokoro/attach/img/midokoro_sennenkurobe-1.jpg

www.rinya.maff.go.jp

栗駒山麓を覆う原生林の中でひときわ目立つ巨木で、雷に打たれたというウロ(空洞)があるにも関わらず、今も凛として立っています。

今なお県内外から多くのファンを惹きつける巨木。

世界谷地周辺の道沿いに看板が立っていて進む方角がわかるようになっているので、足に自信のある方はぜひ会いに行ってみてください。

 

 

栗駒山関連の呼び名はどれも印象的なものが多く、世界谷地しかり、千年クロベしかり、そして秋には栗駒山の紅葉が「神の絨毯」と呼ばれます。

特に今は高山植物が数多く花開く時期で、いろんなことを全部忘れて没頭できる景色がそこにはあります。

深呼吸すると、湿原の生命力が伝わってくる気がする世界谷地。

なお、世界谷地は標高1000メートル未満とはいえ平地と比べると気温は低く、急に天候が変わって雨が降ることもあります。

防寒対策・雨対策をし、そして登山をする場合はクマ対策も忘れずにしてください。