毎日暑くて暑くて北海道へ避暑にでも行きたい…そんな猛暑が続くこの頃ですが、本州にお住いの方々にとっては北海道よりも近いところに、涼しい場所があります。
日本三大鍾乳洞の一つ「龍泉洞(りゅうせんどう)」は、岩手県の真ん中に近く、岩泉町(いわいずみちょう)にあります。
全長5000m以上とも言われる巨大な洞窟はまだ全容が明らかではなく現在も探査が続いていて、そのうち700mほどの部分が一般公開され見学することができます。
洞窟というと年間を通じて気温が安定している場所が多いですが、龍泉洞の場合はだいたい10度前後。
夏でも冬でもほぼ同じ気温で、連日の猛暑を忘れさせてくれる涼しさです。
龍泉洞の魅力はもちろん、涼しさだけではありません。
洞窟内では途方もなく長い年月をかけて成長した鍾乳石が幻想的にライトアップされ、場所によって様々な表情を楽しめます。
岩と岩の重なり具合で洞窟の輪郭がハートに見える場所もあり、人気スポットの一つになっています。
(観光ルートの中で「月宮殿」と呼ばれる場所の、帰る際の方向から眺めると見えやすいです。混雑時など一方通行になっている時は行きに守り獅子付近に立ち、亀岩の方向を見てみるとちょっと左に傾いたハートが現れます。)
日本三大鍾乳洞というと他には山口県の秋芳洞と高知県の龍河洞がありますが、龍泉洞が他の鍾乳洞とは一線を画していると言える特徴が、地底湖の透明度です。
龍泉洞内には複数の湖がありますが、もっとも透明度が高いものがこちら。
透明度41.5メートル、つまり120メートルほどある水深のうち41.5メートルの深さまで見通すことができるほど、水が透き通っているのです。
どこまでも続くような湖を見つめていると、吸い込まれそうな心地になります。
実はこの地底湖、番きれいに見える季節は冬。
冬は降水量が少なく湖の水量が安定するため、水が濁りにくくなります。
また地表が凍ることで上から落ちる雫がなくなり、波紋によって起こってしまう水面の揺らぎも落ち着いて、透過性が高まるのです。
夏に涼しさを求めて行くのも良し、どこが水面か分からなくなるほど透明度の高い地底湖を狙って冬に行くのも良し。
そして冬の龍泉洞での、もう一つの楽しみがコウモリです。
龍泉洞は洞窟そのものだけでなく、そこに住むコウモリの両方が国の天然記念物として指定されていて、5種類のコウモリが生息しています。
コウモリは夜行性なので見学可能な日中の時間帯に見るは難しいですが、冬であれば洞窟内で冬眠しているので、観光通路からすぐ見える場所にとまっていることが多いようです。
洞窟の暗さに目が慣れてくると意外と見つけられるそうなので、冬に訪れた際はぜひ探してみてください。
岩泉町では2016年に台風10号の豪雨により町のあちこちで洪水が発生し、多くの人が亡くなって、龍泉洞もしばらく立ち入ることができない状態でした。
山と川が非常に近い距離にあり、その合間を縫うように人が暮らす岩泉町は、大雨時には自然の厳しさに直面する場所であると同時に、自然の懐の深さを実感する場所でもあります。
災害を乗り越え今も県内外から多くの人が訪れる龍泉洞は、その象徴の一つと言えそうです。
なお龍泉洞周辺で採水される透明度の高い水は、「龍泉洞珈琲」という商品に使われていて、アンテナショップのほか一部コンビニなどでも手に入れることができます。
岩手の深い恵みが生む美味しさ、ぜひ感じてみてください!