今月(2020年10月)15日に青森県の八甲田山系で初冠雪が観測され、昨日17日には岩手県の岩手山でも初冠雪の発表がありました。
いずれも平年と比べて数日前後している程度で、ほぼいつも通り、季節が進んでいることを示しています。
東北以外でも、北海道や北関東、富山の10を超える山々でここ数日、続々と初冠雪が観測されています。
初冠雪とは、山の山頂付近がそのシーズンで初めて、雪で白くなることを意味しています。
毎年秋になると、富士山をはじめ全国の山から初冠雪の便りが届くのを風物詩として感じている方も多いと思います。
でも、「白くなった」ことを誰がどうやって「確認」して「発表」しているのでしょうか?
距離40キロ!?あくまで「目視」で確認!
初冠雪の観測は、各地の気象台職員が「目視」で行います。
「目視」、つまり人の目で見て確認するということです。
が、基本的には気象台は県庁所在地の市役所の近くなど市街地にあることが多いので、秋に雪が降るほど標高の高い山は必然的に割と遠いところにあります。
たとえば、このブログで紹介したことのある山形県の月山(がっさん)は、観測地である山形地方気象台から約40キロ離れています。
これだけ距離があるのでもちろん双眼鏡を使いますが、それでもたとえば、気象台とその山との間に雲が発生していて視界を邪魔したりすれば山は見えません。
初冠雪は気象台から「目視」で行うと決められていますので、極端な話、たとえ山に住んでいる人が雪が積もっているのを目撃していても、気象台から見えなければ初冠雪の発表はされません。
ちょっと四角四面すぎるやり方のように思われそうですが、初冠雪の発表は単に風物詩のためにやっているわけではなく、季節の進み方が昔と今でどう変化しているのかを調べる目的があるため、昔からやっている同じやり方で観測しなければ比較の意味がなくなってしまうのです。
そんな手間暇のかかる観測を、全国の気象台職員の方々は今日も人知れず担ってくださっています。
年々減る目視観測
人の目を使った観測は当然ながら人がいる場所でしかできませんが、2000年代に入ってから気象観測は拠点は次々と無人化されてきました。
人の代わりを務める機械の性能が年々向上し、生身の人間が観測した場合と比べても天気予報精度への影響が十分小さいと判断されたことも大きな理由の一つですが、単純に人件費を節約する目的もあります。
目視で行われていた観測項目は初冠雪の他にも初雪や雲量(空の何割が雲で覆われているか)など沢山ありますが、こと初冠雪に関しては、測候所の無人化(アメダスへの統合)が大きいと言えます。
測候所とは簡単に言えば小さな気象台のようなもので、かつては全国に90以上ありましたが、この20年ほどの間に次々と閉鎖され、今では帯広(北海道)と名瀬(奄美大島)の2か所のみとなりました。
東北ではたとえば、かつて山形県の酒田測候所で鳥海山(山形と秋田の県境付近にある山)の初冠雪を観測していましたが、無人化されてからは気温や降水量などは測れても目視観測はできないため、鳥海山の初冠雪は観測自体が廃止されたことになります。
ただ、古くから地元で愛され続けている鳥海山の様子を市民に伝えるため、今では酒田市役所が観測を引き継ぎ、正式な気象観測記録にはならないものの、初冠雪の発表を続けています。
今しか楽しめない!三段染め
東北では今、山頂の標高が1500メートル前後の山で初冠雪ラッシュ。
そして紅葉前線が今いるのは高さ1000メートルを切るくらいの場所なので、初冠雪した山では山頂付近の白、中腹の紅葉、そして麓の緑と、三段染めが楽しめることになります。
(遊佐鳥海観光協会の公式Facebookより。2021年の様子。)
今の時期に積もる雪は、晴れの日が何日か続けばすぐ溶けてしまうことが多いですが、冬が近づくにつれてだんだん溶けるスピードを積もるスピードが上回るようになっていきます。
そして、山にしっかり雪が積もる頃には紅葉は完全に平地へと降りてきます。
刻々と姿を変えながら私たちに季節の進行を教えてくれる、カレンダーのようなみちのくの風景。
常に「今しか見られない」風景たちを、ぜひ出来るだけ沢山楽しんでください!