このところ本業の原稿がまったく追いつかずに、ついに10日もブログを書かないまま時間が経ってしまいました。
印刷所から上がってきた初校のゲラを朱入れして印刷所に返すことを「初校戻し」と言いますが、今ようやくそれを終えつつあるところです。
ということで、今日からは従来通りほぼ毎日更新できるはず…!
(温かい目で見守っていただければ幸いです。)
さて、今週のお題が「感謝したいこと」になっていますが、東北ではお店や旅館などで、意外な相手に商売繁盛の感謝をすることがあります。
彼の名前は「仙台四郎(せんだいしろう)」。
実在した人物で、名前といっても本名ではなく、仙台市民がそう呼んでいた(そして今も呼んでいる)ということですが、かれこれ100年ほどもの間、神様として、そしてキャラクターとして、親しまれ続けています。
この記事では、私も仙台に住んでいた身として、親しみの気持ちを込めて本名(芳賀四郎とも芳賀豊孝とも)ではなく、「仙台四郎」と表記させていただいます。
仙台四郎が生きていたのは、幕末から明治のはじめの頃。
知的障害があり、通常の会話はできなかったとの説もありますが、仙台市内を陽気に歩き回り、あちこちの商店に顔を出していたようです。
そして、彼が歓迎されたお店は繁盛し、冷遇されたお店は逆に経営が左前になったという話が広まったことから、福の神だとしてあちこちのお店がこぞって彼を招きもてなすようになったといいます。
そして、彼が亡くなったあと、時代がめぐり(昭和の頃といわれますが)、仙台市内の店を中心に彼の写真やイラストを飾る習慣が広まっていったそうです。
今でも仙台市内の飲食店(特に古いお店や商店街にあるお店など)にはかなりの確率で四郎さんの肖像画や人形が飾ってありますが、私は福島県のお店でも見つけたことがあります。
なお、東北にはほかにも以前ご紹介したように、座敷わらしが訪れる家は栄えるという言い伝えがあります。
私が知らないだけで、他にも意外な相手に感謝する習慣の残っている地域があるかもしれません。
民間信仰とか、人神とか流行り神とかいうとなんだかすごく一般化されてしまいますが、仙台市民が四郎さんを大事にする習慣には、たとえ商売がうまくいっても、それは自分だけの力ではなく誰かの「おかげさまだ」と考える、日本人らしい感性が凝縮されているように感じます。
そんなことを想いながら、今夜も図版の整理をがんばります。
(敵は原稿だけではなかった…。)