毎年1月14日、宮城県仙台市にある大崎八幡宮では、全国最大級の正月送りが行われます。
お正月の飾りや古いお札などを御神火で燃やす行事で、全国各地で「どんと祭」や「左義長」などと呼ばれるものですが、この大崎八幡宮では「松焚祭(まつたきまつり)」と呼び、約300年の歴史があります。
今年2021年は、伝統を途切れさせないよう、感染症対策を徹底し、例年と少し違う様子で本日開催されましたが、実際の祭を見たことのない方が多いと思いますので、本来の賑わいを感じていただくために、今回は過去の写真とともにご紹介したいと思います。
お正月に使った注連飾りや門松を燃やす祭りは、その炎の勢いから「どんと祭(とんど祭、どんど祭など)」、あるいは伝統的には「左義長」などと呼ばれ、松が明ける1月8日に行う地域や、小正月にあたる1月15日(あるいは前夜の1月14日夜)に行う地域など、呼び名とともに日取りも各地で様々です。
中でも大崎八幡宮のどんと祭、正式名称「松焚祭」は、例年10万人以上が訪れるという全国最大級の規模。
境内で燃え上がる「御神火」を目指して白鉢巻・白さらし姿で参拝する「裸参り」も、例年は県内各地の企業を中心に数千人が参加します。
「裸参り」はかつて、寒さの厳しい時期に酒の仕込みをする杜氏が参拝したのが起源とされ、江戸時代中期にはすでに定着していたと言われる、仙台市民にとってはおなじみの光景。
雪の中での祭になる年も多い中、気合いで参拝します。
当日は祭のためのシャトルバスも運行され、神社からかなり離れたところまで人の波が続きます。


お正月飾りなどを燃やす「御神火」は、正月期間中に各家庭を訪れていた神々を送る意味があり、その火にあたることで心身が清められ、新しい一年の家内安全・無病息災のご加護を受けられるとされています。
例年10万人が集まる松焚祭は、勢いよく燃える炎の周りに多くの人が集まる賑やかな風景と、一人ひとりが一年の無事を願う静かな内面とが共存する形で長年受け継がれ愛されてきた、仙台という土地にとってとても大切な一日です。
今年は分散参拝を促すため、特別に祭期間を16日まで延長して正月飾りなどを受け入れることにしています。
なかなか例年通りにはできないことが多い中でも、やはり、なんとか伝統行事が継続されることを、心強く感じる市民が多いのではないかと思います。
かくいう私自身も、今や仙台を離れた身でありながら、少しホッとしている一人です。


いつか、「いつも通りの松焚祭」が戻ってきたときには、ぜひこの熱気を、御神火と社殿の神々しさを、そして祭を愛する市民のハートを、多くの方に直に感じてほしいと思います。