花粉は何かと話題が尽きないテーマではありますが、今日ご紹介するのは花粉症の"ジオグラフィー"(地理学)です。
上図は、全国にあるスギの人工林の分布図。
全国のほとんどの地域にスギ林が広がっていることがよくわかります。
というのも、まっすぐ成長して建材にぴったりなスギは人工林に植林されている樹木の種類として最も多く、人工林全体の半分近くを占めるのです。
ちなみに上の図で白くなっている大阪府や徳島県に住んでいてもスギ花粉症の症状が出る人がいると思いますが、白いところはスギ林が「ない」わけではなく1万ha未満ながら存在しますし、そもそもスギ花粉は風に乗って100キロ以上飛ぶことができるので、近隣の県から越境してきている花粉もあります。
一方で、さすがに沖縄までは飛ぶことができないので、沖縄では(スギ林がわずかにあるとはいえ)スギ花粉の症状が出る人はかなり少ないのです。
そして例年3月に入ると徐々にヒノキ花粉の飛散も増えていきますが、ヒノキの分布がこちら。
北日本や北陸のほぼ全域で白の表示になっていて、スギとは対照的に地域性がはっきり出ています。
実はヒノキは温暖な気候で育つ植物で、寒い地域や雪深い地域では冬を越すことができないのです。
隣接する県から越境してくる花粉もありますが、隣接県のヒノキも少ないため越境する量も少なく、私が東北に住んでいた頃も「花粉症と言えばスギ」という雰囲気でした。
そしてもちろん北海道までは飛ばないので、北海道ではヒノキ花粉症の症状が出る人はほとんどいないということになります。
ちなみに沖縄にはスギ林もヒノキ林もほとんどなくて羨ましい…と思う人は多いと思いますが、代わりにリュウキュウマツやサトウキビ、ススキなどの花粉症になる人はいます。
また、北海道ではヒノキ花粉がほとんどない代わりに、シラカバなど寒冷地ならではの樹木の花粉が飛びます。
シラカバ花粉は北海道で飛ぶ花粉の中でも特に飛散期間が長く、例年6月頃まで飛ぶところがあり、かなり長い期間、花粉症と戦うことになります。
それぞれの地域で、それぞれの花粉事情があるのです。
ちなみに花粉がたくさん飛ぶと花粉症だけでなく洗濯物が汚れるなど嫌なことばかりですが、ちょっとだけいいこともあります。
「花粉光環(かふんこうかん)」といって、空気中にスギなどの花粉が多量にあることで、太陽の光が曲げられ(「回折」といいます)このように虹色に見える現象です。
花粉に苦しめられるだけでは悔しいので、「今日は一段と花粉を感じる!」という日には、(太陽を標識などで隠して直接見ないようにしながら)ぜひ観察してみてください。