「この冬は雪が多い」と感じている人は多いかもしれません。
今週のお題「現時点での今年の漢字」と言われれば、東北に関するブログを書く私にとってまっさきに浮かぶのが「雪」です。
こちらは各地の積雪が平年と比べてどのくらい多いか少ないかを示した地図です。
この地図で暖色系であれば平年よりも多く雪が積もっていることになります。
東北地方ではオレンジ色の150%以上の地域が目立ち、特に秋田・青森付近には300%以上を示す濃いピンク色の表示まであります。
もっとも比率が高いところで実に344%。
平年の3倍を優に超える積雪で、地元の方々の除雪作業がいかに大変か目に浮かぶようです。
ここまで雪が多いことの理由の一つは、いま地球全体が「ラニーニャ」の状態にあることです。
「エルニーニョ」とか「ラニーニャ」という言葉はここ20年ほどで一般にもだいぶ浸透してきたように思いますが、要するに世界の海の温度が「エルニーニョ的な分布パターン」になる時と、「ラニーニャ的な分布パターン」になる時があって、それぞれのパターンごとに日本で発生しやすい天候が変わる、ということです。
世界の海の温度が「ラニーニャ的な分布」になっている時、つまりペルーの西でいつもの年より冷たくて東南アジアで温かい時は、日本では夏に猛暑になりやすく冬は極寒や豪雪になりやすい、という傾向があります。
ペルーも東南アジアもものすごく遠いのに日本の天候に影響するなんて不思議に感じる方が多いとは思いますが、世界の海と大気はすべてつながっているため、実はこういうことはさほど珍しくありません。
こういった、遠くにある場所同士で天候が影響し合うことを「テレコネクション」と呼びます。
さて、今「ラニーニャ」の状態なので日本で大雪になりやすい、という傾向があるものの、あくまで「傾向」なので、これだけですべてが決まるわけではありません。
もう一つの鍵は、「北極振動」です。
北半球で一番冷たい空気は当然ながら北極周辺にありますが、その北極周辺の空気は、北極点の周りに固まって留まっていることもあれば、周りへ広がっていくこともあります。
北極中心にぎゅっとまとまったり、外へ広がったり、またぎゅっと戻ったり……というふうに寒気の収縮と放出を繰り返してまるで振動しているようなので、これを「北極振動」と呼びます。
(上図:北極振動によって寒気が放出されている状態のイメージ図、リンク元:JAMSTECのHP)
収縮と放出は規則正しく起きるわけではなく、たとえば、しばらく収縮が続いていたあとに放出が始まって2週間で終わることもあれば、1か月くらい放出し続けることもあったりします。
また、寒気を大量に放出することもあれば少しだけのこともあります。
この「北極振動」で寒気が放出されるタイミングで日本を含め中緯度の国々は寒くなります。
そして、特に日本があるあたりに向かって大量に寒気が放出されるような場合には、日本に強烈な寒気がやってきます。
今年は「北極振動」によって日本付近に強い寒気が流れ込むことが多くなっていて、そのたびに雪がどかっと降っていることが積雪の量を押し上げています。
なお、ラニーニャは今後、冬の終わりまで続く可能性がかなり高いと気象庁から予想が発表されています。
(気象庁HPの「エルニーニョ監視速報」は毎月10日に更新され発表される。)
また、北極振動については前もって予測することが難しいですが、1週間ほど前になるとわかることが多いため、もし寒気の放出が始まりそうだとわかった場合には気象庁HPの「早期天候情報」のページで発表されます。
目先、顕著な気温低下や顕著な大雪は予想されていませんが、2週間気温予想などを見ると、このさき来月2月にかけて北日本~北陸で平年より低めの気温が予想されているところが多くなっています。
寒さから身を守りつつ、そして雪による事故に細心の注意を払って、できる限り健康で安全に冬を乗り越えましょう。