毎年、新酒鑑評会で全国最多の金賞受賞数を誇る福島県。
県内の蔵元の多くが集まる会津地方の、とりわけ栃木との県境に近い山沿いの地域にある南会津町(みなみあいづまち)が、今回ご紹介する日本酒が醸される舞台です。
南会津町にある蔵元の一つ、開当男山(かいとうおとこやま)酒造が造る「南山」は、創業300年を記念して誕生したお酒です。
南会津産の酒米「夢の香」を100%使用した純米吟醸で、吟醸酒にしては少し甘めですが、酸味が少なくすっきりとした香りで、冷やして飲むと特に美味しいお酒です。
「南山」という銘柄名は、かつてこの地が「南山御蔵入(みなみやまおくらいり)」と呼ばれる天領だったことに由来しています。
天領とは江戸幕府の直轄領の呼び名の一つで、当時は主要な米の産地や鉱山、重要な港など全国のあちこちに直轄領がありました。
会津地方は地形上の利点として、米の大敵である夏の冷たい風「やませ」が届かない場所であり、また米作りに重要な水は豊富な雪解け水によって与えられるため、昔から質の高い米がたくさん取れる地域。
幕府が会津を選んだのも肯けます。
ちなみに開当男山の「開当(かいとう)」は、創業者である渡部開当(はるまさ)の名前にちなんでいます。
江戸時代、会津の米の価値をもっと高めたいという思いから開当(はるまさ)ら有志の百姓たちが創業して以降、14代およそ300年にわたって酒造りを続けた開当男山には、社名を関した「開当」や「男山」といった銘柄のお酒もあります。
豊かな穀倉地帯をつくった清らかな雪解け水が、今度は旨い酒を育む。
300年の歴史を積み重ねた日本酒、ぜひ多くの人に飲んでもらいたいです!