和紙を作る伝統技術は日本各地に残っていますが、東北にももちろん多く存在します。
その一つが宮城県丸森町(まるもりまち)に伝わる丸森和紙(まるもりわし)です。
400年以上の歴史を守り続け、地元の人とともに生き続ける丸森和紙。
今週のお題「手帳」に合わせてお送りするのは、今も天然の素材だけを使って漉き続けられる、"ふくよか"な和紙のお話です。
(写真リンク:https://maru.nekiwa.com/blog/2020/10/26/120000 )
丸森和紙が作られている丸森町は宮城県の最南部、沿岸から内陸に少し入ったところにある町です。
阿武隈川(あぶくまがわ)という、福島県から宮城県に流れて海にそそぐ大きな川の下流部にあたり、かつては舟運で栄え商人も多く、豪商の屋敷跡などは今も文化財になっています。
また豊かな山や森で獲れるタケノコや蜂蜜のほか、えごまや柿も特産。
その山では紙の原料である楮(こうぞ)もよく育ち、そして阿武隈川水系の清らかで豊富な水も手に入ることから、古くから紙の生産が盛んでした。
江戸時代にはこの地を治める伊達藩が特産品として紙づくりを奨励したこともあり、生産量が増加。
200軒ほどの農家が紙づくりに携わり、毎月5日と9日には紙市が立つなど一大産業になっていたといいます。
以来400年以上にわたって続く伝統の丸森和紙は、柔らかな手触りと丈夫さが特徴。
かつて平安時代に東北各地で生産され京都の貴族たちの間で人気のあった陸奥紙(みちのくがみ)に似ているとも言われています。
(写真リンク:https://maru.nekiwa.com/blog/2020/09/26/141840 )
一方で明治以降は主要産業が養蚕にとって代わり、また時代とともに和紙の消費量も減ってしまいました。
現在では調べたところ、わずか2戸の農家で生産されるのみとなっています。
それでも受け継がれてきた伝統を次の世代に繋ごうと、丸森町の小学校では卒業証書をこの丸森和紙で作っています。
卒業証書が和紙でできているって、すごく素敵ですよね!
しかもその紙を漉くのは、卒業を目前にした子どもたち自身。
今も天然の素材と伝統的な工程にこだわって作り続けられる和紙を、10代の子ども達の手で漉く。
この貴重な経験は子どもたちにとってきっと一生の思い出になって、伝統を守りたい、残していきたいという気持ちのきっかけになるはずです。
ところで冒頭の手帳の話に戻りますが、この丸森和紙を使った手帳が存在するのです。
紙を作るところから綴じるところまで全48工程をすべて職人さんが手仕事で行うという驚異的な手のかかり具合ですが、それにしては安く売りすぎているという気もするい一方で、できるだけ多くの人が手に取れる値段で出していくことも大切さも感じるので、少し複雑な気持ちです。
ちなみに表紙の綺麗な緑色は、楮(こうぞ)をヨモギで染めているとのこと。
今では色んなタイプの便利な手帳が売っていますし、そもそも手帳ではなくスマホにスケジュールやメモを書いているという人が多数派になってきましたが、そういう時代だからこそ、手仕事の詰まった贅沢な手帳もいかがですか?